慶應義塾大学FinTEKセンター(以下、FinTEKセンター)は7月8日、ブロックチェーンを活用した個人情報管理システム開発に関する研究「STAR(Secure Transmission And Recording)プロジェクト」において、トークンエコノミーをSTARプラットフォーム内に作る実証実験を開始すると発表した。

  • STARプロジェクトにおけるトークンエコノミーのスキームと参画企業の例

同プロジェクトはFinTEKセンターが中心となり、ブロックチェーンを活用して「学生の個人情報を、学生自身の手に戻す」ことを目指して2020年8月に開始したもの。個人情報の管理を実現を目指す3年間の共同研究プロジェクトで、2021年8月から始まる今回の実証は、その第2弾となる。

第1弾ではブロックチェーン技術によって学生の個人情報の秘匿性を担保しつつ、企業がデータを有効活用する技術基盤を構築した。第2弾ではさらにアクティビティ要素を追加して、学生が活発に情報を発信するデザインと機能に拡張していくとしている。

トークンエコノミーは、トークンと呼ばれる代替貨幣を用いた経済圏である。この限定された経済圏の中で、価値のある行動やコンテンツにトークンを付与することで、経済圏を活性化させる。実証実験で主となるテーマは就職活動であり、STARトークンエコノミーでは、就職活動において企業が学生の情報開示を求める際に、情報量などに応じて企業がトークンとして「STARコイン」を発行する。

同実証では、従来の就職活動では評価されにくい学習履歴やサークル活動などに対しSTARコインを付与することで、独自の価値を与える。同センターはプロジェクトを通じて、学生の個人情報提供における安全性の確保と、学生と企業の双方に有益な個人情報活用戦略の研究、学生と企業のマッチング制度の向上を目指すという。

STARコインによって、従来の就職活動で評価されてきた成績表や履歴書だけではなく、学習履歴やサークル活動など学生の成長に関する情報にも独自の価値が付与されるとのこと。なお、同実証には11社の企業と2000人以上の学生が参加する。

共同研究においてブロックチェーンシステムの開発を担当するInstitution for a Global Society CEOの福原正大氏は「個人情報の授受にブロックチェーンを利用することで、個人情報を守りながら企業と情報交換が行えるようになる。また、ブロックチェーンはトークンなどの代替通貨の作成が容易であり、自由にインセンティブ設計が可能なため学生の成長にも寄与できるだろう」とコメントしている。

  • 個人情報の譲渡にブロックチェーンを用いることで、安全性が高まるという 資料:Institution for a Global Society

また、同プロジェクトに参画するコクヨ経営企画本部イノベーションセンター長の三浦洋介氏は「学生が学ぶプロセスに着目し、創造性を刺激して個性を輝かせることができれば、学びの価値自体が上がっていくと考えてプロジェクトに参加した。学生のノートは知的生産活動の集積であり、学生の学びの価値を社会に提供していきたい」と述べた。

  • 学生の学びを社会の価値として還元したいとのこと 資料:コクヨ