富士通とBOOSTRYは5月25日、ブロックチェーン上で管理する有価証券、バウチャー、会員権などのデジタルアセット(セキュリティトークンなど)取引の本格化を見据えた円滑かつ安全な権利移転モデルの確立を目指し、実証実験を経て、複数の取引サービスを相互に接続するプラットフォームサービス提供に向けたビジネスモデル検討を開始すると発表した。

両社は、デジタルアセット取引を先進技術で支え、デジタルアセットの普及、農業分野や不動産、エンターテインメント・スポーツなどのファンビジネスといった新規取り扱い商品創出を促進するDX時代の金融システムとして、2020年度下期中に富士通のクロスチェーン技術(異なるブロックチェーンを活用した相互利用の技術)「コネクションチェーン」(異なるブロックチェーンやエコシステム間をブロックチェーン技術により安心・安全に相互接続する技術)とBOOSTRYの分散型資金調達プラットフォーム「ibet」(BOOSTRYが開発した有価証券、会員権、利用券など権利の発行・管理を行うブロックチェーン基盤)を活用した相互接続プラットフォームサービスの提供により、権利取引と決済の実現を目指す。

近年、あらゆるもののデジタル化に伴い、株式や債券などの有価証券だけでなく、さまざまな商品をトークン化したデジタルアセットの普及が見込まれており、2020年5月に施行された金融商品取引法の改正では、ブロックチェーン技術などでデジタル化された有価証券が電子記録有価証券表示権利と新たに定義されている。

これにより小口取引が容易になり、利用者の増加や新たなアセット商品の創出につながり、金融市場の活性化を促すことが期待されているが、それらを管理するブロックチェーン技術は各事業者が異なるアーキテクチャや独自の仕組みを実装している場合が多く、相互取引の実現を困難にし、利用者の利便性を低下させ、普及を阻害する可能性があるほか、決済においても口座振替、クレジットカード、ポイントなどのさまざまな事業者とシームレスな取引を行うことが今後必須になるという。

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両社は、2020年3月から4月にかけてデジタルアセット取引と決済を権利移転する実証実験を行い、運用と技術の両面から幅広く、課題を検討し検証を行った。

実証実験では、富士通のクロスチェーン技術であるコネクションチェーンを介して、BOOSTRYのブロックチェーンを活用した分散型資金調達プラットフォームのibetと、疑似的な資金決済網とを接続し、ibet内でデジタルアセットの権利移転と、それに伴う資金決済網内での決済に成功した。

両社は、異なる別システムとして構築された基盤同士をコネクションチェーンで相互接続し、円滑かつ安全に権利移転と決済を行えることを実証した。今後、両社は実証実験で挙がった課題などを検証し、ビジネスモデル構築に向けた協議を行い、2020年度下期中に異なる基盤間で複数の取引をシームレスに実現する相互接続プラットフォームサービスの提供を目指す。