金沢大学(金沢大)は4月28日、イオン液体を一滴加えるだけで、「ペロブスカイト太陽電池」の高性能化と長寿命化を実現する方法を開発したと発表した。
同成果は、金沢大ナノマテリアル研究所のシャヒドウザマン・モハマド助教、同・當摩哲也教授らの研究チームによるもの。詳細は、米国化学会誌「ACS Applied Materials & Interfaces」にオンライン掲載された。
現在市販されている太陽電池のほとんどは、シリコンの結晶をベースとしているが、より安価かつ軽量な次世代太陽電池として、塗布法が利用可能なペロブスカイト太陽電池の実用化が期待されている。研究チームも、2015年に塗布成膜の際に、イオン液体(常温で液体として存在できる塩)を1滴ほど添加することでナノ粒子薄膜が得られることを報告していた。これは、ペロブスカイト前駆体溶液にイオン液体を少量加えてスピンコートを実施すると、膜が数十nmサイズのナノ粒子膜化するというものだという。
今回の研究では、この技術を、結晶シリコン太陽電池に匹敵する性能を発揮することが期待される「セシウム-ホルムアミジニウム-メチルアンモニウム」の3つの陽イオンをベースとした高性能なトリプルカチオン型ペロブスカイト太陽電池に応用。実験の結果、大粒で高結晶性の高品質な、欠陥が少ないトリプルカチオン型ペロブスカイト膜が得られたとする。
エネルギー変換効率も19.4%を達成したほか、電流値である短絡電流密度も25.3mAcm-2を示すことを確認したとする。この結果について研究チームでは、イオン液体添加により高品質化され、全体的な光捕集効率の向上およびキャリア輸送性能が向上したことによるものと考えられるとしている。
さらに、寿命についても従来製法では約2500時間で発電しなくなってしまっていたのに対し、同技術を適用すると6000時間経っても性能を8割保持していることを確認したという。この長寿命化の理由について研究チームでは、イオン液体添加により膜が高品質化したことと、イオン液体層が外部からの水の侵入を防いだことが考えられるとしている。
なお、研究チームでは今後も、今回の研究をさらに進展させ、ペロブスカイト太陽電池の実用化と共に、さらなる高性能化と低コスト化を目指していく予定としているほか、イオン液体については、ペロブスカイト太陽電池以外のものに対しても有用である可能性があるとしている。