花王は化粧行為ならびにスキンケア製剤の使用によるポジティブ感情が「うるおい」や「透明感」などの肌の質感を向上させ、肌内部の遺伝子発現を変化させることを確認したと発表した。

同社は、2018年に先行研究として、スキンケアクリームの使用により、ポジティブ感情が高かった人はうるおい、つや、透明感など肌の質感が客観的な評価の上で向上したことを報告している。

今回はこの先行研究で明らかにされていなかったどのような生物学的変化が肌の質感向上をもたらすかを調べるべく、肌内部の網羅的な遺伝子発現情報を非侵襲的に取得できる独自技術「皮脂中RNAモニタリング技術」を用いて、心地よい使用感のクリームがもたらす感情の変化と、肌質感ならびに肌内部の遺伝子発現変化との関連性の検討を行ったという。

具体的には、被験者は心地よさを感じやすく設計したスキンケアクリームを4週間使用し、スキンケア後の感情状態を計測。肌質感については先行研究同様、客観的な評価を行ったうえで、皮脂中RNAモニタリング技術を用い肌内部の遺伝子発現情報を取得する形で行われた。

実験の結果、ポジティブ感情が高かった群は「うるおい」「乾燥感のなさ」「透明感」「肌の黄みのなさ」の4項目で計測した肌質感において全体的に向上がみられ、とくに「うるおい」項目において有意差が見られたという。

また、遺伝子発現情報の解析から「うるおい」や「透明感」が向上した人では、保湿に重要な角層細胞を強固にする遺伝子やバリア機能に欠かせない脂質代謝に関わる遺伝子が活性化していることが判明した。

  • 同研究で判明したスキンケア時にポジティブ感情が生じた際の目視評価での質感変化と遺伝子発現の変化のイメージ図

    今回の研究で判明したスキンケア時にポジティブ感情が生じた際の目視評価での質感変化と遺伝子発現の変化 (提供:花王)

研究チームは、同研究により、心地よい使用感の化粧品がもたらす快感情によって肌質感が向上する際に、表皮機能変化が促されていることが示唆されたが、感情の変化がどのように肌の遺伝子発現変化を誘導するのかについては明かされていないため、今後、感情の変化と遺伝子発現変化との関連性についても検討していくとしている。

なお、同研究の詳細は2020年9月に開催された「第22回日本感性工学会大会」にて発表され、「優秀発表賞」を受賞した。