日本電気(NEC)は2月26日、神奈川県警友会 けいゆう病院の協力を受け、ソフトウェアロボット(RPA)を使用した自動入力により、新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理システム(HER-SYS、ハーシス)への医療従事者の登録業務を効率化する実証実験を実施したと発表した。同社はこの実証で使用するシステムの製品化を進めており、2021年3月下旬の発売を目指す。
厚生労働省は新型コロナウイルスの感染拡大防止に向けて、保健所などの業務負担軽減及び情報共有・把握の迅速化を図るため、2020年5月にHER-SYSの利用を開始した。HER-SYSの利用により、保健所、自治体、医療機関、関係業務の受託者などの間での情報共有が即時に行えるなど、国民に対してより適切かつ効率的な医療の提供につながることが期待されているという。
一方、HER-SYSを効果的に運用するために登録が必要な入力項目は多岐にわたり、情報整理や入力作業を行う医療機関の負担増大への懸念があるとのこと。
今回の実証は、けいゆう病院にてHER-SYSへの登録業務を行う看護師など医療従事者を対象に、同システムを使用することでHER-SYSへの登録業務の時間と手間の削減が可能かの検証を2月17日から26日に実施した。
RPAにより自動入力を実現するNEC Software Robot Solutionと、登録情報の収集に電子カルテのテンプレート機能を使用することで、主に看護師など医療従事者によるHER-SYSに必要な情報収集の正確性の向上や入力作業の効率化などの一連の登録業務を支援するという。
実証実験の内容は、電子カルテ情報と連携した登録用データの作成及び、RPAによるHER-SYSへの登録の自動化の2点。
電子カルテ情報と連携した登録用データの作成については、同社の電子カルテシステムとの連携により、氏名や生年月日などの電子カルテの入力項目に含む患者基本情報などを自動的に引用できるため、医療従事者はPCR検査の時間や結果などの電子カルテから引用した情報以外の項目の入力のみで、HER-SYSへの登録用データを作成できるとしている。
入力ツールには、同社の電子カルテシステムなどが標準搭載するエムケイエス(MKS)が提供するダイナミックテンプレートを利用する。これにより、医療現場の業務用PCからテンプレート形式で効率的に漏れなく入力作業ができ、1つの画面に必要な入力項目をまとめている。
また、ダイナミックテンプレートの利用により、将来に向けた未知の感染症対策時にも、新たなテンプレートを作成・配信することでデータ収集運用が可能となり、運用の汎用性が実現できるとのことだ。
RPAによるHER-SYSへの登録の自動化に関して、通常はHER-SYSの専用サイトからWebブラウザ上で1項目ずつ入力作業が必要だが、今回の実証では事前に作成した登録用データを用いて入力作業を自動化・効率化できるとしている。実証には、HER-SYS専用に調整したRPAであるNEC Software Robot Solution HER-SYS専用版を使用する。