2021年は業種別ビジネス、ローコード開発に注力

2021年の戦略として、村瀬氏は以下の4つを挙げた。

  1. パートナーエコシステムのさらなる拡大と強化
  2. インダストリービジネスの強化
  3. 市民開発
  4. デジタルリテラシー向上のための協業と投資

(1)と(2)では、業種別を進めるとするグローバルの戦略を日本でも展開するための取り組みとなる。中でも通信、金融、製造などにフォーカスし、これらの業界に強いパートナーとの連携を強化する。また、ServiceNow認定技術者も、現在の600人から2021年末までに倍の1200人にしたいという。

パートナーに関しては、ServiceNowの選任部隊「Customer Outcome」がパートナー企業のデリバリーを支援するサービス「ServiceNow Assure」を日本でローンチする。価値に沿ったプランニング、設計アドバイザリー、コンフィグレーションレビューなどの支援を通じて、成功を支援する者となる。

(3)の市民開発とは、専門知識のないビジネス担当者がアプリを作成する「ノーコード」「ローコード」を意味する。「今後4年で5億のアプリケーションが世界で作られると言われている。これは過去20年間に作られたアプリケーションの数と同じだ」と村瀬氏。デジタル化やビジネスの変化に伴い業務フローを変えなければならず、それを支える新しいシステムが必要になるという。

そこで、ServiceNowは3月に予定しているメジャーリリース「ServiceNow Quebec」で導入するAppEngine Studioで、市民開発をサポートするという。ベストプラクティスに基づくアプリとフローテンプレートを利用して迅速に構築できるだけでなく、ワークフローの中で開発ができるため「クラウドでありながらガバナンスのあるワークフローを生かし、将来のバージョンアップも考慮した形で開発ができる」と、村瀬氏は説明する。

村瀬氏は、「日本企業にはバックログが多く残っている。一番プロセスをわかっているのは業務側。ビジネスアジリティを加速する方法で、日本でニーズは高いと見ている」と述べた。

(4)のデジタルリテラシー向上は、ニューノーマルの世界での「人」の問題に対する取り組みを指す。特に40〜50代について、DXを止めてしまう要因になっているのならリスキルが必要という。

ドイツでは「Next Gen」プログラムとして、ミュンヘン工科大の学生に対してServiceNowのトレーニングを無償提供し、ServiceNowの顧客であるBMWとAllianzがリアルなビジネス課題を与え、学生がServiceNowを使って解決するソリューションの提案までを完全にリモートで行ったそうだ。「同様のプログラムを日本でも展開したい」と村瀬氏は語った。

ワクチン接種管理をリリース

ServiceNow全体の方向性としては、プラットフォーム戦略から新しい社会や経済の一旦を担うワークフローになることだ。

  • ServiceNowはITSM(ITサービスマネジメント)のSaaSからスタートし、プラットフォーム戦略にシフト、今年からは官民問わず、社会全体をよりよくするためのワークフローを目指すという

その一例として、村瀬氏は新型コロナで自社が行っている危機対応支援を紹介した。2020年4月の緊急事態宣言から8日後に無償提供した「危機管理支援アプリ」を皮切りに、安全な職場復帰のための「Safe Workplace App」、そして2021年1月27にはワクチン供給・管理「Vaccine Administration Management(VAM)」を発表した。

VAMは、従業員ワークフローやITサービス管理などのコンポーネントを組み合わせることで、医療従事者のオンボード/オフボード、ワクチンの割り当てや優先順位の仕組みを構築、ポータルやチャットボットを利用してワクチン接種の予約やスケジュール管理などの機能を備えた。備蓄では、IoTソリューションとひもづけて、マイナス75度を超えそうならアラートを出してフィールドサービスにつなげるといったことができるという。

このように、既存のコンポーネントを組み合わせることで迅速にソリューションを開発できたことから、スコットランドでは「競合するワクチン接種管理ソリューションが市場にない」という理由で入札プロセスなしに採用されたそうだ。

世界的にワクチンの接種が始まりつつあり、VAMは今後、配布、接種、モニタリングのための機能にさらなるフォーカスするとのことだ。

ワクチン接種状況の管理としては、Safe Workplace Suiteの一部として「Vaccination Satus App」として2020年12月に日本語版をリリース済み。ある生命保険会社が採用し、PCR検査への誘導を含む健康管理と従業員のワクチン接種率の可視化などの機能を備えたものを、企画後3週間で本番リリースしたという。

VAMは2月より日本語版をリリースするが、すでに日本でも受注案件があるとのことだ。