岡山大学(岡大)は2月18日、日中の噛みしめがあると歯周病が進行しやすいことを確認したと発表した。

同成果は、岡大大学院 医歯薬学総合研究科 予防歯科学分野の森田学教授、同・江國大輔准教授、岡大病院 咬合・義歯補綴科の加藤聖也医員、岡大大学院 医歯薬学総合研究科 口腔形態学分野の福原瑤子助教らの研究チームによるもの。詳細は、欧州・歯周病専門雑誌「Journal of Clinical Periodontology」に掲載された。

歯周病は、歯を支える周囲組織(歯周組織)の炎症であり、歯ぐきだけでなく支える骨にまで広がると、歯を喪失する恐れがある。歯周病は進行・再発しやすいため、長期にわたって歯周組織を安定に保つことが重要だ。そのため、歯科医院で定期的に専門的なケアを受けることが推奨されている。

歯周病が進行する要因には、さまざまなものがある。その中でも、過度な力で噛みしめることは、歯を支える歯ぐきや骨に悪影響を及ぼすことが知られていた。研究チームの森田学教授と加藤医員をはじめとする研究チームがかつて行った横断研究の成果から、歯周病の重症度と日中や睡眠時の噛みしめ・歯ぎしり(強すぎる力がかかる例)が関係することは確認されていた。しかし、実際に日中や睡眠時の噛みしめ・歯ぎしりがどのくらい歯周病の進行に関わっているのかはこれまでわかっていなかった。

岡山大病院予防歯科で定期的に歯周病の専門的なケアを受けている歯周病患者のうち、横断研究に参加した48人を対象として、今回の研究は行われた。研究スタート時に、歯周組織の検査、噛むときに使う筋肉の活動量の検査(日中と睡眠時の噛みしめや歯ぎしりの検査、歯周病と関係が深い細菌(Porphyromonasgingivalis)に対する血液中の抗体の検査、およびアンケート調査が実施された。

3年間の追跡が行われ、その間に歯周病が進行したかどうかを調べられた。なお、最大の力で噛みしめたときの筋肉の活動を100%として、20%以上の筋肉の活動が1時間に約1分以上観察される場合を、「日中の噛みみしめ」があるということに設定された。その結果、「日中の噛みみしめ」があると、ない場合よりも4.9倍歯周病が進行しやすいことが明らかとなったのである(画像)。そのほか、歯の数が少ない人ほど歯周病が進行しやすいことも判明した。

今回の調査による研究成果は、今まで知られていなかった「日中の噛みみしめ」というリスクの発見につながった。このことは、新たな歯周病の予防対策に貢献できる可能性が期待されるという。

歯科医院で定期的に専門的なケアを受けていても、歯周病が進行してしまうことは起こりえる。歯周病が進行しないように、歯科医師、歯科衛生士、および患者が協力して、できるだけリスクを避けることが望ましいとする。歯科関係者は、「日中の噛みみしめ」という新たなリスクにも注目して、歯周病の進行を予防することが重要であると考えるとしている。

  • 歯周病

    日中の噛みしめと歯周病進行の関係 (出所:岡山大学プレスリリースPDF)