国立天文台は12月18日、ハワイ現地時間12月10日に、すばる望遠鏡が、探査機「はやぶさ2」の拡張ミッションの目的地である微小小惑星「1998 KY26」の撮影に成功したことを発表し、その画像を公開した。

今回の観測はJAXAの宇宙科学研究所からの依頼に基づいて行われ、観測結果は国際天文学連合 小惑星センターが発行する「小惑星電子回報」に掲載され、「1998 KY26」の軌道の精度向上に活用された。

「1998 KY26」は、1998年5月28日に米国のスペースウォッチ・プロジェクトによって発見された微小小惑星だ。ちなみに「1998 KY26」とは仮符号であり、1998は1998年、Kはその年の5月下旬(16日から月末)を意味し、Y26がその半月のうちに発見された順番を表す。発見の順番ではIを除いた25個のアルファベットが使われ(発見月の前半後半を表すアルファベットでもIは使われない)、2巡目はA1~Z1、3巡目はA2~Z2と表されるので、Y26は27巡目の674番目ということになる。

「1998 KY26」は約30mという小型で、自転周期は10分強という高速回転をしている。軌道長半径は1.23天文単位(1天文単位=太陽~地球間の約1億5000万km)、公転周期は1.37年(500日)だ。火星が1.4~1.6天文単位なので、

炭素のあるC型小惑星の可能性があり、レーダーでの観測や、可視アルベルトがやや低いことなどから、水の存在の兆候もあるという。

地球と「1998 KY26」の軌道の関係で、3年半に1度観測好機が訪れる。まさにこの12月中旬から下旬にかけては、地球に0.47天文単位まで接近しており、撮影に絶好のタイミングだ。現在は双子座の方向にいて、25.4等級(測定誤差0.7等級)の光の点として撮影された。ちなみに今回の観測で得られた位置測定データは、「1998 KY26」の軌道要素の精度向上に活用される。

また今回の観測では、超広視野主焦点カメラ「ハイパー・シュプリーム・カム(HSC)」が用いられ、撮影はハワイ現地時間12月10(日)2時4分から同16分にかけて行われた。5枚撮影され、露出時間はそれぞれ2分間。全面的に赤いのは、rバンドで撮影されているためだ。

なお「1998 KY26」は現時点ではまだ仮符号だが、初代「はやぶさ」が探査した小惑星「イトカワ」(1998 SF36)や、「はやぶさ2」が探査した小惑星「リュウグウ」(1999 JU3)など、今後、正式名称がつけられるものと思われる。「はやぶさ2」が「1998 KY26」に到着するのは、2031年7月のことなので、まだ先の話かも知れないが、公募などが行われる可能性も高いはずだ。今からそのときに備え、考えておいてはどうだろうか。

  • 1998 KY26

    画像中央の2本の水色の線が交わる位置にある点光源が「1998 KY26」だ。すばる望遠鏡に搭載された、“世界最高性能のデジカメ”ともいわれるHSCを用いて撮影された。画像の画角は30秒角×15秒角。なお背景の恒星が流れているのは、「1998 KY26」を追尾しているため。(c) 国立天文台 (出所:国立天文台Webサイト)