アジレント・テクノロジーは12月8日、従来ソリューションに比べさまざまな分析ワークフローで必要とされる時間を短縮することを可能としたICP-MS「Agilent 7850 ICP-MS」を発表した。

  • Agilent 7850 ICP-MS

    「Agilent 7850 ICP-MS」の外観

同製品はICP-MS「Agilent 7800 ICP-MS」の後継機に位置づけられるモデルで、主にルーチン分析を必要とする部門をターゲットとしている。そのコンセプトとして「Time Trap」が掲げられている。これは、時間がかかるような作業の罠にはまらせない、という同社の想いが込められた言葉で、例えばルーチン分析におけるさまざまなメソッドをアジレントが提供し、それをユーザーが活用することで、メソッドの開発期間の削減を可能としている。現在、これらの分析メソッドの多くは米国や中国の薬局法に対応したものが中心となっているが、日本の法規制に沿ったメソッドの提供についても検討が進められているという。

また、「超高マトリックス導入(Ultra High Matrix Introduction:UHMI)」により、最大25%、溶解固形濃度サンプルを希釈せずに直接分析することができるため、希釈作業をはじめとするサンプル前処理時間の削減、ならびに前処理の際に生じるコンタミネーションの抑制といったことも可能。さらに、ソフトウェア「IntelliQuant」を活用することにより、分析サンプルの中から、75元素(初期設定)を対象に、どの元素がどの程度入っているかというヒートマップを作成でき、それにより入っていると想定していなかった元素が実は入っている、といったことのチェックや、異常な濃度の特定といったことを容易に行うことができるようになっている。

  • Agilent 7850 ICP-MS

    IntelliQuantを用いて、多数の元素をスクリーニングした結果をヒートマップで表示した際のイメージ。異常な濃度の元素や、想定外の元素、サンプル前処理のミスなどを把握することができる

このほか、分析結果のレビューやレポートの作成時間短縮に向け、出力データの中から所定のしきい値を越えた部分や、要件を満たさない部分などに対し、色を付ける形で強調表示とすることで、業務の効率を向上できる「アウトライヤ設定(OCF)」機能や、常に分析装置を最善の状態にするべく、装置にセンサとカウンタを搭載することで、最適な部品交換や洗浄のタイミングやどのようなメンテナンスがいつ必要かといったことを教えてくれるといった「アーリーメンテナンスフィードバック(EMF)」機能なども提供されている。

  • Agilent 7850 ICP-MS
  • Agilent 7850 ICP-MS
  • OCFのイメージ。外れ値アラート機能を活用することで、指定された範囲外の結果や、試験要件を満たしていない結果が強調表示される

  • Agilent 7850 ICP-MS

    EMFのイメージ。ポンプチューブの交換、コーンのクリーニング、真空ポンプオイルの交換など、メンテナンス作業の緊急度を容易に把握することができる

さらに、withコロナ時代で求められるリモートワークにも対応することを可能とした「ICP Go」も提供される。これは、ブラウザベースのユーザーインタフェースを提供するオプションソフトウェアで、ネットワークにつながったタブレットなどの端末で装置の状況を把握することを可能とするもの。これを使うことで、自宅に居ながらでも装置の稼働状況を把握したり、ルーチンサンプルバッチの設定や管理などを行うことが可能になるという。

  • Agilent 7850 ICP-MS

    ICP Goの利用イメージ。分析装置の前に常にいなくても、装置の状況などを把握することができる

なお、同製品の価格は2300万円(税別)からで、受注はすでに開始されており、2021年1月からの出荷開始が予定されている。