中身を刷新し、高性能化と短時間メンテナンスを実現したLC/MS

アジレント・テクノロジーは7月1日、トリプル四重極LC/MSの新製品となる「Agilent 6470B」を発表した。

同製品は2015年に発表されたトリプル四重極LC/MS「Agilent 6470A」の後継モデル。トリプル四重極LC/MSというコンセプトはそのままに、内部のシステムボードや機構を刷新することで、高性能化とメンテナンス時間の短縮の両立を実現した。

その大きな特徴が同社が2018年に市場投入したトリプル四重極質量分析装置「Ultivo」から採用された真空開放することなくイオンインジェクタのキャピラリー交換を可能とする「VacShield」の採用。これにより、定期的なクリーニングメンテナンスの時間が従来の6時間から30分へと短縮することが可能になるという(6470Bの発売により同社のトリプル四重極LC/MSの現行モデルすべてにVacShieldが搭載されたこととなる)。

  • VacShield

    VacShieldの搭載によりメンテナンス時間を大幅に短縮することが可能となった (資料提供:アジレント)

また、質量範囲も2019年4月に投入したトリプル四重極LC/MSシステムの最上位機種となる「Agilent 6495C」と同等のm/z5~3000まで拡張しており、これにより核酸医薬やペプチドなどの分析にも活用することが可能になったとする。

  • Agilent 6470B

    Agilent 6470Bが対応するイオンソースの一例 (資料提供:アジレント)

1サンプル約2秒のサイクルタイムを提供するSPE/MS

また同社は、併せて1サンプルあたり約2秒のサイクルタイムで分析を可能としたハイサンプルスループットSPE(Solid Phase Extraction:固相抽出)/MS「Agilent RapidFire 400」も発表した。

同システムは溶液などに含まれる分析対象物とそれ以外の不純物を分離する手法であるSPEを活用することで、受託分析のような短時間でさまざまな分析が求められる分野での活用を想定して開発されたもの。前世代となる「RapidFire 365」では対応ウェルプレートが384ウェルまでであったが、RapidFire 400では1536ウェルにも対応。作業負担の軽減を図ることが可能になったほか、新開発の高速搬送ロボットの搭載や、バーコードリーダーによるサンプルトラッキング機能(オプション)なども搭載可能であり、従来機と比べ、さらなる高速分析を可能にしたという(RapidFire 365についても1536ウェルに対応するアクセサリの提供を将来的な計画として予定しているとのことである)。

具体的には、1サンプルあたり8~15秒ほどのサイクルタイム(クリーンアップなしの場合では1サイクルあたり2.5秒)としており、96ウェルのウェルプレート63枚(6048サンプル)をハンドリングする場合、従来機では16時間ほど必要であったものが、15時間19分弱まで短縮できるとしている。

また、分析精度の向上を可能とするオプションとして専用のサンプル冷却機能も用意。温度範囲は4~10℃程度までとしているが、外部温湿度の影響を考慮する必要があるため、条件により温度範囲が若干異なってくるという。

さらに、コンパクト収納を可能にする専用ラックも用意。Ultivoと組み合わせて活用することで、一体型の形で省スペースでの活用も可能になるとする。

  • 「Agilent RapidFire 400」

    「Agilent RapidFire 400」の概要 (資料提供:アジレント)

同システムの国内での主なターゲットは製薬ならびに受託分析のハイスループットラボでの化合物スクリーニングや検証、同定といった分野だが、海外では法医学や毒性学などでも活用されているほか、メタボロミクスやライフサイエンスの定量プロテオミクスなどでも活用実績があるとのことで、同社ではウェビナーなどを通じて、未開拓分野の見込み顧客に向けた技術のアピールを行っていき、新たな顧客の獲得につなげたいとしている。

なお、2システムともに即日受注を開始。Agilent 6470Bについては2020年7月末ころ、RapidFire 400については年内予定でそれぞれ出荷を開始する予定だという。