京都府立医科大学は10月5日、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が、ヒトの皮膚表面上では9時間程度生存すること、ならびにエタノール消毒をすれば15秒程度で完全に不活化できることが分かったと発表した。

同成果は、同大大学院医学研究科 消化器内科学の廣瀬亮平 助教、同 内藤裕二 准教授、同 伊藤義人 教授、同大 法医学の池谷博 教授、同大 感染病態学の中屋隆明 教授ら研究グループによるもの。詳細は科学雑誌「Clinical Infectious Diseases」に掲載された。

新型コロナウイルスは、ヒトの手指などの皮膚を介して運搬され、口や皮膚から体内に侵入する。そのため、皮膚上におけるウイルスの生存期間を知ることは、有効な感染制御方法の構築や接触感染のリスク評価などに重要な意味を持つこととなる。

ただし、実際に新型コロナを被験者の皮膚に行うことは危険性が高く、実施ができない。そこで研究グループは今回、法医学解剖献体から採取した皮膚を用いた病原体安定性評価モデルを構築、実際の被験者の皮膚上で安定性評価を正確に再現していることを確認したうえで、新型コロナウイルスならびにインフルエンザA型ウイルス(IAV)の皮膚上ならびにさまざまな物体表面上での安定性およびエタノール系消毒薬の有効性評価を行ったという。

その結果、新型コロナは、ステンレススチール・耐熱ガラス・プラスチック(ポリスチレン)の表面上でIAVに比べて8倍ほど長い生存時間であること、ならびに皮膚上での不活化までの時間はIAVの1.8時間程度に対し、9時間程度かかることが確認されたという。

また、80%w/wエタノールの消毒効果評価では、新型コロナ、IAVともに15秒間の曝露で完全に不活化されることが確認されたとのことで、エタノール消毒薬を用いた手指衛生は、皮膚上に生存する新型コロナウイルスの接触伝播リスクを低減するのに効果的であることが示されたとする。

なお、研究グループでは、今回考案された剖検体皮膚を用いた病原体安定性評価モデルについて、新型コロナウイルス以外の高病原性・高伝染性病原体のヒト皮膚表面上での安定性や消毒薬効果の評価も可能であり、今後の感染制御の発展への貢献が期待できるとしている。