NTTドコモは9月8日、新潟県佐渡島でスマートグラス「AceReal One」を活用して、同島特産「おけさ柿」の栽培を技術指導員が遠隔から指導する実証実験を開始した。また、経験の浅い農業従事者の早期の技術取得を目指し、熟練者の技を3D映像で記録する実証実験も実施し、AceReal Oneの活用と3D動画撮影による技術伝承を組み合わせた農業支援は、全国で初の取り組みだという。
佐渡島では、高齢化により農業の担い手が減少する後継者問題を抱えているため、新規参入者や臨時の農業従事者に栽培技術を伝えていくことが重要課題となっており、今回の取り組みで栽培技術を見える化し、経験や勘に頼らない農業を目指す。
実証実験は、農林水産省の「令和 2 年度スマート農業実証プロジェクト」の公募において採択され、新潟県を代表機関とするコンソーシアムのプロジェクト内で実施。実証実験では、柿生産においてスマート農業技術導入による、農作業の省力化および経営改善の効果実証を行う。
具体的には(1)スマートグラスを活用した遠隔指導による実践支援、(2)3D 動画撮影によるマニュアル作成に取り組む。
(1)では、せん定などの作業時に、ほ場にいる現地作業員がカメラ、マイク、スピーカー内蔵のスマートグラスを装着し、送信した映像を離れた場所にいる熟練者(技術指導員)が見ながら音声で指示。指示内容は、現地作業員のスマートグラスに映し出してせん定要否などの指導を行う。スマートグラスには、作業手順を表示できる機能も備え、両手が空いた状態で使用できるため、ほ場での作業の妨げにならず、作業の見える化と作業時間短縮の効果が期待できるという。
(2)では、熟練者の果樹のせん定作業などの様子を3Dカメラで撮影し、熟練の技を動画マニュアルとして記録。3D動画は、VRゴーグルで閲覧することで平面では表現・体現されない奥行きが体感でき、新規参入者の技術習熟の早期化を支援する。なお、動画の編集やディレクションは、動画配信やシステム開発による農業支援を行うAGRI SMILEが行い、農業従事者の視点に沿った動画マニュアルとなる。
実証実験の期間は、9月8日~2022年3月までを予定。主な実証実験メンバーと役割として、新潟県 農林水産部農産園芸課は実証プロジェクト総括、実証事業全体のとりまとめ、進行管理を、新潟県 農業総合研究所園芸研究センターは実証リーダー、作業手順のチェックリスト作成、遠隔指導を、新潟県 佐渡地域振興局農林水産振興部は共同実証機関、スマートグラス投影資料の収集・提供、遠隔指導・支援実証を、ドコモは共同実証機関、スマートグラスの提供、3D動画撮影によるマニュアル作成を、JA ファーム佐渡は生産者、実証フィールド(ほ場)の提供、作業実施をそれぞれ担う。
今後、ドコモは5Gエリアの拡充による通信の高速・大容量化、低遅延化も見据え、今回の実証実験の結果を通じて、同様の課題を抱える新潟県内や全国のパートナーの農業分野における課題解決や発展に引き続き取り組む考えだ。