三井不動産とワールドファームは8月4日、持続可能なスマート農業事業を通じた農地の生産性向上と、農業を基点に都心と近郊地域の人々をつなぐ新たな「都市づくり」を目指し「三井不動産ワールドファーム株式会社(MFWF)」を設立し、同1日から東京都心近郊地域での農業事業に本格的に参入すると発表した。

  • 生産・加工の様子

    生産・加工の様子

持続可能なスマート農業事業とはワールドファームの「儲かる農業」の仕組みにテクノロジーを加え、農業の作業プロセスを効率化し、効果的な人材育成を行うことで達成する、生産性の高い農業ビジネスモデルを指す。

同事業は、三井不動産のベンチャー共創事業の一環として推進し、MFWFの立ちげにあたり大手企業のオープンイノベーションをサポートする「BASE Q」の伴走支援により、事業検討開始から約6カ月で社内承認を得ており、伴走支援はMFWFの経営ビジョン策定、ビジネスモデルの検証、具体的な事業計画の策定、三井不動産グループとのシナジー構想などにわたる。

新会社の特徴として「生産・加工一体型の農業事業」「集団農法による組織的・計画的な農業運営」「加工・業務用野菜に生産を限定」「テクノロジーを活用した高い生産性の確保」「都心と近郊地域の人々によるイノベーション共創拠点の設置」の5点を挙げている。

生産・加工一体型の農業事業では、ワールドファームが推進している生産・加工一体型の農業事業を展開し、従業員が多能工として野菜の生産と工場での加工の両方を行う生産・加工一体型経営により、人的資源の効率運用を可能としている。

集団農法による組織的・計画的な農業運営については、適材適所の人材配置と役割分担、業務フローの明確化を徹底し、圃場の運営を複数人で組織的に行う集団農法で高い生産性を実現するほか、就労時間の明確化や労務管理の整備も徹底し、農業従事者が安心して働きやすい環境を提供するという。

加工・業務用野菜に生産を限定すること関しては販売単価が安定し、一定期間の保存が可能な冷蔵・冷凍加工野菜を中心に取り扱うことで、事業の安定収益化につなげる。

テクノロジーを活用した高い生産性の確保では、ICTを用いた圃場管理システム、生育~収穫までの天候と各作業プロセスのデータ化、就労者の教育・育成におけるリモートコミュニケーションの整備、野菜加工の一部自動化などを検討し、三井不動産ベンチャー共創事業部が行ってきたCVC投資や、ベンチャー企業との協業・支援などの実績を活かす。

イノベーション共創拠点の形成については従業員がリモートワークなどをできる環境を整備し、農業のプロフェッショナルを目指す人に加え、自らの仕事を持ちながらも、さまざまな形で農業に従事したい人が就労できる体制を整える。さまざまな人が同事業に参画することで、収益性向上に資する農業の生産/加工手法の発見に加え、農業に付帯する地域観光や宿泊・飲食業への波及、加工・業務用野菜の都心への直販や海外販売、さらには果樹やその他地域特性に応じた生産活動まで視野に入れた新たな事業が創造されるような、イノベーション共創拠点の形成を目指す。

今後、8~9月に栃木県芳賀町と茨城県筑西市周辺エリアで約6haの圃場運営を順次開始、2021年春~夏にキャベツカット加工用の冷蔵工場の竣工、2023年春~夏にホウレンソウやブロッコリーの冷凍加工工場の竣工、2025年(予定)に栃木県芳賀町と茨城県筑西市周辺エリアにて約100ha程度に事業規模拡大、将来的には大都市圏近郊地域で3000haまで圃場の拡大を予定している。