広島大学は9月4日、ウシオ電機が開発した有人環境下で利用可能な波長222nmの紫外線を照射できるウイルス不活化・殺菌技術「Care222」を用いた新型コロナウイルスの照射実験において、不活化効果を確認したと発表した。

同成果は同大大学病院感染症科の大毛宏喜 教授、ならびに同大学大学院医系科学研究科ウイルス学の坂口剛正教授らの研究グループによるもの。詳細は学術誌「American Journal of Infection Control」(オンライン版)に掲載された

紫外線の殺菌作用はかなり以前より知られていたが、人体に害を及ぼすことも知られていた。近年、波長222nm付近の紫外線であれば、人体への害が抑えられるという報告があり、その活用が期待されていた。

今回、広島大の研究グループはウシオ電機が開発した遠紫外線である波長222nmをピーク波長としたエキシマランプに独自技術を用いた特殊フィルタを組み合わせることで、人体に有害とされる230nm以上の波長をカットし、人の皮膚や目に障害を起こさないとされる波長200~230nmの紫外線のみを任意照射することを可能とした技術「Care222」を用いて、新型コロナウイルスに対する不活化効果の検証を行った。

  • Care222

    ウシオ電機が開発した人の目や皮膚への安全性が報告されている222nm紫外線(200~230nm領域)の照射が可能な(有害とされる230nmより上の波長はフィルタでカット)Care222技術を搭載した「Care222 U3ユニット」 (編集部撮影)

その結果、同技術を採用したウイルス抑制・除菌フィルタ付き遠紫外線222nmエキシマ「Care222 U3ユニット」を用いて、222nm紫外線をプラスチック上の乾燥した環境において、新型コロナウイルスに照射したところ(照度0.1mW/cm2)、照射30秒で99.7%の検出限界に達し、60秒以上でも変化がなかったことから、不活化効果を発揮することが確認できたとしている。

  • Care222
  • Care222
  • 222nm紫外線による新型コロナウイルスの不活化効果の概要。検出感度の限界が99.7% (資料提供:広島大学)

広島大で研究が行われた背景としては、一般的に用いられる定量逆転写PCR法は、不活化されて感染力のないウイルスの遺伝子のかけらであっても検出してしまい、生きた感染力をもったウイルスであるかどうかは分からないという課題があった。実際に、本当に感染力があるかどうかの判別は細胞を培養して判断する必要があったが、そのための培養技術を持っているところが限られており、今回、高い細胞培養技術を有している同大が行うことで、こうした成果を得ることができたという。

なお、研究グループでは今回の研究で新型コロナウイルスへの不活化効果が確認されたことから、この成果をもとに今後、有人環境下における222nm紫外線による新型コロナウイルス感染対策に向けた応用を期待したいとしている。