東北大学災害科学国際研究所、東京大学地震研究所、富士通、川崎市は8月24日、新型コロナウイルス禍での自然災害を想定した避難所運営の実証実験を同31日に川崎市川崎区にて実施すると発表した。4者は2017年から「川崎臨海部におけるICT活用による津波被害軽減に向けた共同プロジェクト」を進めており、実証実験はその一環として行う。2020年は、避難所の3密(密閉・密集・密接)による新型コロナウイルスへの感染リスクを低減した安全な避難に向け、感染を考慮した人流シミュレーション技術とAI画像解析ソリューションを活用した実証実験を行う。

都市部の災害避難では、避難所が過度に混雑することが想定され、災害から逃れて安全を確保するのと同時に、避難所の3密による新型コロナウイルスの感染リスクを低減することが重要だという。4者は実証実験に向けて、事前に実験に合わせて開発した、避難者の中に新型コロナウイルス感染者がいると仮定した上で人の流れの違いで異なる感染リスクを感染を考慮した人流シミュレーション技術で可視化し、適切な避難所運営計画を検討する。

実証実験当日は、避難所付近に設置したカメラ映像から避難者の数や属性などの情報を同社のAI画像解析ソリューションで自動収集し、避難所の混雑状況を把握。計測された情報はリアルタイムに災害対策本部に転送され、3密リスク低減に向けた早期の適切な対応を可能にするとしている。

実証実験は8月31日の13時~16時、場所は川崎市立殿町(とのまち)小学校(川崎市川崎区殿町1丁目17-19)、参加者は約60人(内訳:4者の共同プロジェクト関係者約20人、殿町小学校避難所運営会議、川崎区役所避難所運営要員、各区危機管理担当、総務企画局危機管理室など)。

具体的な実験内容は、川崎市が策定した新型コロナウイルス感染症マニュアルに沿って、川崎市職員が避難所の開設から避難者の受付までを実施することで、感染リスクを考慮した人流シミュレーションによる避難所運営計画の検討と、避難完了者数のカウントを行うAIの有効性を評価するとともに、避難所での実際の業務を体感することで避難所運営要員の対応能力向上を図る。

東北大学災害科学国際研究所、東京大学地震研究所、富士通研究所が開発したさまざまな状況下での人の流れを再現する人流シミュレーション技術に、今回新たに新型コロナウイルス感染症への感染リスク評価機能を組み込むことで、人の流れの違いによる感染リスクの変化をシミュレーション可能にしている。

同技術により、避難者の中に新型コロナウイルス感染者がいると仮定し、感染者のソーシャルディスタンス内に一定期間以上留まった人を接触者とみなし、人の流れと合わせて感染がどのように広がるのかを予測することができるという。

4者は新型コロナウイルス禍におけるさまざまな避難所運営計画をシミュレーションし、具体的には避難所受付の設置数や受付要員数の違いといった避難所運営の相違に応じて変化する感染リスクを評価し、その中から状況に応じた適切な避難所運営の実施計画を検討する。

  • 避難者の避難行動の違いによる感染リスクをシミュレーションで評価

    避難者の避難行動の違いによる感染リスクをシミュレーションで評価

さらに、実証実験では同社のAI画像解析ソリューション「FUJITSU Technical Computing Solution GREENAGES Citywide Surveillance V3(グリーンエイジズ シティワイド サーベイランス V3)」を活用し、避難所入り口付近に設置したカメラの映像から、マスク着用の有無にかかわらず個人を特定しない範囲で避難者の数や属性情報を収集できるため、リアルタイムに避難所の混雑状況を可視化。計測した避難者の情報を災害対策本部にリアルタイムに集約することで、避難状況の的確な把握に向けた有効性を評価する。

  • 避難者の数や年代を計測するAI

    避難者の数や年代を計測するAI

4者は今回の実証実験で得た知見をもとに、新型コロナウイルス禍でのより安全な避難に向けた施策検討を行うことに加え、災害時だけでなく人が集まる施設やイベントなどにおける混雑検知や感染リスク低減に向けて、今回開発・評価した技術適用の可能性も検討していく考えだ。