米IBMは8月17日(現地時間)、次世代のIBM POWERプロセッサとなるIBM POWER10を公開した。同プロセッサは企業のハイブリッドクラウドに特有のニーズに対応するプラットフォームを提供する。。IBM POWER10プロセッサ搭載システムの提供開始は、2021年下半期を予定している。

  • IBM POWER10のウェハ

    IBM POWER10のウェハ

同プロセッサは7nmフォームファクターを採用し、処理能力と効率性の向上に重点を置いて設計され、IBM POWER9プロセッサと比較して、エネルギー効率やワークロードキャパシティ、コンテナ密度を最大で3倍に高めることが期待されている。

また、現在の主要な暗号化規格と耐量子暗号/完全準同型暗号など、今後予定されている暗号化プロトコルの両方に対応するAES暗号化エンジンが同プロセッサに追加されたことで、エンドツーエンドのセキュリティと高速暗号化の処理能力を実現するハードウェアメモリ暗号化を提供。現在、最も使われている暗号化規格を使用した社内テストの測定結果では、IBM POWER9と比較して40%速くデータを暗号化することを可能としている。

さらに、コンテナの高密度化によって懸念される新たなセキュリティ上の考慮事項に対処するために、IBM POWER10ファームウェアと共に開発されたハードウェア強制型コンテナ保護や分離機能を新たに提供している。コンテナが不正アクセスされた場合には、同じ仮想マシン(VM)内の他のコンテナにも同じ影響が及ばないようにすることを可能としている。

サイバー攻撃は進化を続けており、新たに発見された脆弱性は組織が修正を待っている間に混乱を引き起こす恐れがあるが、同プロセッサは新しいアプリケーションの脆弱性を能動的かつリアルタイムに防御できるように設計されており、動的実行レジスター制御機能を提供し、処理能力の損失を最小限に抑えつつ、攻撃に対して耐性のあるアプリケーションを設計できるという。

加えて、さまざまな構成のIBM POWER10プロセッサ搭載システム全体の物理メモリ確保やクラスタ化することで、デプロイ機能を進化させており、新技術であるMemory Inceptionは一度有効化されると、クラスタ内にある任意のIBM POWER10プロセッサ搭載システムが相互のメモリにアクセスして共有できるように設計されており、マルチペタバイトサイズのメモリクラスタを構築できる。

そのほか、トランザクションやアナリティクスのワークフローで使用するビジネスアプリケーションにAIが組み込まれるにつれて、AI推論が企業のアプリケーションの中で重要性を増すことから、専用のハードウェアを追加しなくてもコア内部のAI推論能力を拡張する設計が行われている。

プロセッサに組み込まれた行列計算アクセラレータにより、企業のAI推論ワークロードの性能をIBM POWER9と比較してソケットあたり32ビット単精度浮動小数点演算(FP32)で10倍、16ビット半精度2進浮動小数点演算(BFloat16)で15倍、8ビット整数演算(INT8)で20倍も高速な処理が期待されており、企業が自社で学習したAIモデルを活用して現場での作業を高速化するという。