千葉落花生スマート農業実証コンソーシアム(代表機関:NTTデータ経営研究所)は6月30日、農業・食品産業技術総合研究機構の「スマート農業技術の開発・実証プロジェクト」の委託事業に採択され、今後2年間でスマート農業技術を活用した落花生の生産体制の見直しと労働工数削減、品質の確保を実証すると発表した。
落花生は栽培から乾燥・調製まで露地で行われ、生産工程は各工程の大半を人手に頼っているため、生産効率の向上が課題となっているほか、気象変動で露地自然乾燥時の長雨などにより、品質安定の面でも課題があるという。
そのため実証では、耕起・播種から収穫・乾燥・調製までスマート農業技術を活用することに加え、人力作業中心の露地での自然乾燥から屋内で工業的に乾燥・調製する新システムにより、労働工数の削減と品質の確保を目指す。また、ドローン・センサなどIoTとAIを活用したICT導入で収穫適期判断できる仕組みも実証する。
千葉県は畑作農業が盛んで、全国の8割を生産する落花生は国内では自給率1割程度の供給過少の作物であるにもかかわらず、年々減作しているという。原因の1つに生産工程が挙げられ、単位面積当たり収益が高い作物だが、栽培から乾燥・調製まで露地で多工程による生産が行われ、ほとんどが人手による作業となっている。
また、収穫適期が短く、収穫が早すぎた場合、未熟な莢の割合が多くなり、収穫が遅すぎた場合は完熟した子実が裂果や扁平化を起こし商品価値が下がるという。現在、収穫時期の判断は初期開花からの日数と葉の状態変化、試し掘りにより統合的に判断するが、葉の変化の見極めには熟練を要し、生産者により品質の差が出る理由となっている。
さらに、収穫後の乾燥は「1次乾燥(地干し)」と「2次乾燥(ボッチ)」の2つの特徴的な工程で行われるが、長雨の影響で乾燥が上手くいかず、作業量だけでなく、一部ではカビの発生など品質にも影響が及ぶことがあるという。
このような状況を踏まえた上で同社では「落花生生産工程の省人化技術の確立」「天候に左右されない屋内での工業的乾燥・調製技術の確立と品質の確保」「熟練者でなくてもできる落花生収穫期の適期判断技術の確立」の3点が問題を解決するための課題だとしている。
生産工程の省人化技術の確立については、落花生の耕起などから脱莢・調製までの生産工程において、一貫した機械化体系で省人化を行い、従来と比較し効率化を実証し、従来の労働工数の8割削減を目指す。
屋内での工業的乾燥・調製技術の確立と品質の確保では、乾燥工程は1次乾燥、2次乾燥を露地から天候に左右されない屋内での工業的乾燥・調製に置き換え、水分・湿度・温度センサなど各種センサを駆使し、水分量のコントロールとショ糖率の確保を工業的に確立することで作業時間の削減と品質の確保を実証する。
収穫期の適期判断技術の確立に関しては、ドローンによる空撮画像や固定カメラで取得した画像をAIにより解析し、深層学習用の教師データを作成することで、落花生の収穫適期を判断するためのシステムを構築。推定された収穫適期と実証ほ場で行った落花生の生長解析データとを照合することでシステムの精度を実証し、同一圃場において収穫適期が誤差3日以内で判定できるようAIモデルの作成を行う。
各社の役割として土屋ライスファームはすべての実証を推進・実施、実証圃場の提供、普及、すぎやまは収穫・乾燥・調製工程・AIを活用した落花生の収穫適期判断の実証、実証圃場の提供、全体の実証へのアドバイス、普及、千葉県立農業大学校はAIを活用した落花生の収穫適期判断の実証、実証圃場の提供、全体の実証へのアドバイス、普及をそれぞれ担う。
また、NTTデータ経営研究所は全体の実証計画の立案・推進等プロジェクト管理、業界への働きかけ、普及、NTTデータCCSはAIを活用した落花生の収穫適期判断の実証、普及、TOMTEN Tradingは1次乾燥、2次乾燥の工業的乾燥による水分量のコントロールとショ糖率の確保技術確立の実証、普及を担当する。