日本IBMは6月16日、オンラインで重点施策と今後の取り組みについて記者説明会を開催した。説明会では日本IBM 代表取締役社長執行役員の山口明夫氏がプレゼンテーションを行った。

  • 日本IBM 代表取締役社長執行役員の山口明夫氏

    日本IBM 代表取締役社長執行役員の山口明夫氏

昨年6月に同社としては、7年ぶりの日本人社長に就任した同氏は社長就任からの1年間を振り返った。社長就任後に同氏は、デジタルトランスフォーメーション(DX)の第1章は部門単位のデジタル化やAIに加え、アプリケーションなどをクラウドを提供し、20%の業務のデジタル化、実証実験のフェーズであり、現在地である第2章は企業単位で80%の業務のデジタル化、本格展開・基幹連携し、攻めに転じるフェーズとして位置づけている。

そして、その先は社会の在り方の変革、あらゆる枠を超えた連携、テクノロジーが豊かな社会をもたらすフェーズであるとの認識を示していた。

  • IBMが示すデジタル変革の道のり

    IBMが示すデジタル変革の道のり

そして、同社のビジョンである「最先端のテクノロジーと創造性をもって、お客さまとともに、仲間とともに、社会とともに、あらゆる枠を超えて、より良い未来づくりに取り組む企業グループ」をビジョンに掲げ、以下の6つの領域に対して取り組むべきことを山口氏は明確化した。

1. デジタル変革の推進

2. 先進テクノロジーによる新規ビジネスの共創

3. IT・AI人財の育成

4. 信頼性と透明性の確保

5. 社員が輝ける働く環境の実現

6. 社会貢献の推進

  • 日本IBMのビジョンと重点施策

    日本IBMのビジョンと重点施策

同氏は「社内には多様な事業部があり、枠を取り払って1つのチームとして必要とされているサービス・製品をお客さまの観点で提供していこうと1年間取り組んできた。随分と雰囲気は変わってきたが、まだ不十分なところもあるため、継続的に取り組んでいく」と話した。

デジタル変革の推進ではRed Hatとの協業によりIBM Cloud Paksを展開し、IBM Open Cloud Center、IBM AI Centerの設置、検知から保護、復旧、洞察まですべてのセキュリティ対策を提供するX-Force Threat Managementなど戦略分野への注力した。また、顧客とのパートナーシップ強化、業界向けサービス・ソリューションの推進にも取り組んだ。

  • デジタル変革の推進の概要

    デジタル変革の推進の概要

先進テクノロジーによる新規ビジネスの共創については、パートナーシップ強化としてパナソニックと半導体製造装置の高度化で協業したほか、AIスーツケースのコンソーシアムを発表。量子コンピューティング関連では産学協同の研究拠点「Qネットワークハブ」で慶應義塾大学と共創を推進し、東京大学とはJapan - IBM Quantum Partnershipを発表している。

  • 先進テクノロジーによる新規ビジネス共創の概要

    先進テクノロジーによる新規ビジネス共創の概要

IT・AI人財の育成に関しては、社員のスキル育成強化の一環として開発研修、クラウドデータサイエンティスト向け研究を全社員に展開し、企業向けにはAI人財育成支援、未来のIT人財育成では大学生向けAI活用人材の育成、学生向け量子ネイティブ育成キャンプの開催、P-TECHを推進している。

  • IT・AI人財育成の概要

    IT・AI人財育成の概要

信頼性と透明性の確保では、G20にDFFT(信頼ある自由なデータ流通)に関して提言し、日米デジタル貿協定でDFFTを採用。さらに、差別の撤廃支援に向けて汎用的な認証技術の開発と提供を中止し、米国における人種間の平等を促す書簡を連邦議会に発信しているという。

  • 信頼性と透明性の確保の概要

    信頼性と透明性の確保の概要

社員が輝ける働く環境の実現については、ダイバーシティの推進として障がい者インターンプログラム(Access Blue)、本社事業所における学童保育、男性の育休100%宣言を実施していることに加え、家族も参加できるイベントの開催や社員参加型働き方改革などを行っている。

  • 社員が輝ける働く環境の概要

    社員が輝ける働く環境の概要

社会貢献の推進に関しては、従来からの取り組みである自然災害をプログラミングで克服するCall for Codeや求職者向けスキル育成・就労支援プログラム、IBMとパートナー企業のオンラインラーニングコンテンツプラットフォーム「SkillsBuild」を日本でも展開を予定。

また、新型コロナウイルス感染症への対応として研究支援コンソーシアムを設立や特許の無償提供、Call for Code - COVID-19 対策をテーマに追加などを実施している。

  • 社会貢献の推進の概要

    社会貢献の推進の概要

ニューノーマルと今後の展望

山口氏はニューノーマルと今後の展望に関して「人の移動からデータとモノの移動が前提になり、人々の生活、企業活動、産業構造などの仕組み、資本主義やグローバル化など価値観の変化が加速しており、新しい経営戦略の策定が必要だ」と話す。

同氏によると、ニューノーマルに向けて必要な対応として「リモートワークの促進(人事担当)」「顧客とのバーチャルな接点の構築(営業・マーケティング担当)」「事業継続性の強化(IT担当)」「機敏性と効率化の促進(COO/経営企画担当)」「サイバーセキュリティリスクへの対処(セキュリティ担当)」「コスト削減とサプライチェーン継続性の確保(財務・物流・購買担当)」「医療や行政サービス現場への支援(医療・行政担当)」の7つの経営分野を挙げている。

  • ニューノーマルに向けて必要な対応

    ニューノーマルに向けて必要な対応

山口氏は「今後、自動車や家、企業など多様なものがつながるようになり、ハイブリッドクラウド、オンプレミスをはじめデータが増加する。そのような中でスーパーコンピュータや量子コンピュータで高速大量処理、複雑な解析を行い、AIはどこにでも導入され、それらの管理は一元化し、セキュリティを担保しなければならない。そのため、われわれではRed Hatを買収したほか、量子コンピュータ、セキュリティに注力し、研究開発、コンサルティング、システム開発、運用・保守で顧客を支援している」と力を込めていた。