東証の適時開示情報を基に経営権の異動を伴うM&A案件(グループ内再編を除く)について、ストライク(M&A Online)が集計したところ、2020年3月のIT・ソフトウエア業界のM&Aの発表件数は14件で、3月としては2008年以降の13年間で、2008年、2015年の17件、2010年の16件に次ぐ4番目となった。新型コロナウイルスの問題が深刻化しつつあった3月だが、IT業界の3月のM&A市場では影響は限定的だったといえそうだ。

  • IT・ソフトウエア業界 M&Aの推移

取引金額は約55億円で、3月としては2008年以降の13年間では中ほどの8番目にとどまった。大型の案件がなく、金額非公表が9件に達したため件数ほどには金額が膨らまなかった。

取引金額トップはTISの約18億円

3月のM&Aで取引金額が最も多かったのは、基幹システムやアプリケーションなどを手がけるTISが、タイのIT企業MFEC Public Company Limited(バンコク)をTOB(株式公開買い付け)で、現在の24.9%の持ち株比率を49%に引き上げ子会社化すると発表した案件で、取引金額は約18億円。

TISは2014年にMFECと資本・業務提携し、協業の推進や追加出資(現在、持ち分適用関連会社)を通じて関係を強化してきた。傘下に取り込むことで、MFEC の事業構造転換を加速するとともに、グループとして海外事業の拡大を目指す。

2番目はソフトウエアの品質保証やテストを手がけるSHIFTが、サイト制作のナディア(東京都港区)と、アプリ開発のxbs(東京都港区)両社の全株式を取得し子会社化すると発表した案件で、取引金額は両社合わせて約17億円。

SHIFTは両社を傘下に収めることで、ユーザーの使いやすさや品質保証サービスの向上を目指す。

3番目はモバイルゲームサービスなどを手がけるコロプラが、ゲームソフトウエア開発や楽曲制作のMAGES.(東京都港区)の全株式を取得し子会社化すると発表した案件で、取引金額は約16億円。

MAGES.は人気ゲームソフト「STEINS;GATE」などを生み出しており、コロプラはこうした高いIP(知的財産権)創出力を持つ同社を傘下に取り込み、モバイルサービス事業の競争力向上を目指す。

このほかに取引金額が約2億円の案件と、同約1億円の案件がそれぞれ1件ずつあった。