東証の適時開示情報を基に経営権の異動を伴うM&A案件(グループ内再編を除く)について、ストライク(M&A Online)が集計したところ、2019年11月のIT・ソフトウエア業界のM&Aは14件で2017年の12件を上回り、2008年以降の12年間で最多となった。2018年1月以降の月別でも2018年9月(21件)、2019年7月(18件)、2019年9月(18件)、2018年8月(15件)、2018年12月(15件)に次ぐ上位6番目で、2018年5月、2019年8月と同数だった。
件数が過去最多となった背景には、日銀による金融緩和で企業の資金調達環境が良好なことやIT関連の人材不足がある。先月(2019年10月)が6件と2018年1月以降の月別で下位から4番目と低い水準だったことの反動による影響もありそうだ。
一方、金額は68億3300万円となり、2009年11月の230億5400万円に次ぐ2番目に高い水準だった。40億円を超える案件があったため、金額が膨らんだ。例年11月は金額が低めで、2015年(47億200万円)以来4年ぶりに2位が入れ替わった。
金額トップはリンクアンドモチベーションの40億7500万円
11月はソフトバンクが子会社のZホールディングスと、韓国NAVERの子会社である LINEとの経営統合を発表した。LINEとNAVERが共同公開買い付けでLINE株式を100%取得したあと、2020年10月に両社を統合するという内容だが、詳細は今後の協議となるため金額は確定していない。
このため11月のM&Aで金額が最も多かったのは、組織や人事などのコンサル業のリンクアンドモチベーションが、インターネットを利用した転職情報サービスや有料職業紹介事業を手がける持分法適用関連会社のオープンワーク(旧ヴォーカーズ、東京都渋谷区)を子会社化することを決めた案件だった。リンクアンドモチベーションがオープンワーク株式を追加取得し、20%の持ち株比率を56.22%に引き上げる。取得価額は40億7500万円。
オープンワークは社員口コミによる就職・転職者向け情報プラットフォーム「OpenWork」を運営している。労働市場では従業員エンゲージメント(企業と従業員の信頼関係)の高い企業に人材が集まる傾向が顕著になっており、オープンワークを傘下に収めることで、こうした流れを加速し、事業拡大につなげるのが狙いだ。
金額上位2番目は個人向け家計簿アプリなどを手がけるマネーフォワードが、SaaS(サービスとしてのソフトウエア)向けリード(見込顧客)獲得メディア「BOXIL」を運営するスマートキャンプ(東京都港区)の株式72.3%を取得し子会社化することを決めた案件。取得価額は新株予約権を含めて19億9800万円。
3番目はスマートフォン向けゲームアプリなどを手がけるドリコムが、イグニス傘下のスタジオキング(東京都渋谷区)が提供・運営するスマートフォン向けゲームアプリ「ぼくとドラゴン」とブラウザゲーム「猫とドラゴン」の2タイトルを取得することを決めた案件。取得価額は5億2000万円。
このほか取引金額を公表した案件4件、取引金額を公表していない案件6件があった。