2月中旬にオーストラリアのメルボルンで開催したネットワーク技術者向けの国際会議「APRICOT 2020」に4回目の出展を果たしたアット東京。今回、同社 常務取締役 営業本部長の山下卓也氏と同 企画室 事業企画部長の大西雅之氏、同 営業本部 社会基盤営業部 課長の大内功氏に参加の手応えと今後の事業戦略について話を聞いた。
--まずは「APRICOT 2020」に参加してみた感想はいかがでしょうか?
大西氏:APRICOTには今回で4回目の出展となります。イベントの特徴としては、主にアジアのネットワーク関連事業者に直接会えることや、アジアの事業者とビジネスを検討している欧米の大手プロバイダーなども参加し、定期的な大規模イベントに来場しないローカルの企業の担当者とも会えるため、われわれの認知拡大を図るには重要なイベントと位置付けています。
2020年はオーストラリアのメルボルンで開催されました。初めてオセアニア地域で開催され、われわれは4回目の出展で知名度も向上していたことから、具体的な案件に向けてお客さまと商談を進めることができました。
普段はメールベースでコミュニケーションをとっている人と実際に対面で会えるなどオーストラリア、アジア、欧米など30社以上とはコミュニケーションがとれました。ニーズとしては、アジアの方が多いため、日本へのビジネス進出にあたり、どういう支援ができるのかと問わることが多い印象です。
そのような事業者は、大手事業者のように日本進出に向けてオフィスを作れるわけではなく、サービスを展開する際にリモートでのサポート体制が問われています。今回で言えば、アジアの事業者と具体的な商談ができたことは意味がありましたね。
--具体的な成果とは、どのようなことがありますか?
大西氏:われわれが従来から参加してきた海外イベントにおいて知り合った事業者とも具体的な話をするなど、欧米系のイベントに来場しないようなアジアの事業者とも具体的な商談を進めている最中です。数年前であれば新規顧客数などのわかりやすい成果でしたが、現在ではイベントへの出展経験を重ねる中でメジャー企業とはビジネスを深め、数ではなく、よりハイレベルな人たちと会うことができています。
また、アット東京が業界で名前を知られたということがありますね。実際、当社のデータセンター(DC)を利用いただいているネットワーク事業者数は当初から7倍に増加しています。海外イベントへの出展に最初から参加していた身からすると、当初は話しかけることすらできないような人たちが逆に話しかけてくれるような関係性が築けていることは、ここ数年の大きな成果だと感じています。
業界自体が人と人のつながりが強いため、容易に入り込むことが難しい場合がありますが、アット東京がネットワークのコネクティビティに強みを持つDCを展開しているということが浸透しているため、ハイレベルな人たちと話すことが可能になってきています。
--コネクティビティの強化について教えてください。
大西氏:ここ数年ではパブリッククラウドの接続性に注力し、Microsoft Azureとの接続が可能になったことをリリースしました。
これにより、東京におけるデータセンターの中でも1つの拠点でAmazon Web ServicesやGoogle Cloud Platform、IBM Cloudをはじめとしたメジャークラウドとの接続性が担保できるのは、われわれだけです。
ネットワークの接続性に関しては、海外の大手コンテンツ事業者が先行して、われわれのDCを利用していましたが、そこにつながるような形で国内の各事業者も利用するなど、いい意味での連鎖が生まれていると思います。
--コネクティビティを強化するために開設する関西地区のデータセンターについて教えてください。
大内氏:われわれは東京を中心に事業を展開していますが、二大商業圏である関西に進出するにあたり、西日本のネットワークの中心になることを目標に掲げています。
関西の人からすれば堂島がネットワークの中心であることは知られています。当社は、この4月に同エリアに立地するNTTテレパーク堂島内にキャリアニュートラルなデータセンターを開設します。
これにより、われわれの東京と堂島のDC間においてATBeXによる相互接続サービスに加え、ネットワーク拠点を東阪に持ちたいお客さまの接続拠点になればと考えています。そのため、堂島のDCは今後われわれが関西に進出するためのネットワークの玄関口として位置付けています。
堂島のセンターへの入居を検討さているお客さまは、単純にバックアップ拠点と考えている方もいらっしゃいますし、東阪接続のネットワーク拠点とすることや、東京、そして地方のネットワークとつなげるにあたり、西日本のハブとしての利用を考えている方もいらっしゃるようです。
大西氏:開設する狙いとして一番大きな理由は、これからクラウド各社の大阪リージョンが本格化していく状況において、お客さまのクラウドへの接続を東京での冗長だけではなく、東京と大阪で冗長を担保するためです。東京と大阪に1つのプラットフォームから接続できることは大きなメリットだと考えています。
--海外の事業者には堂島のDCについても説明していますか?
大西氏:そうですね。最近の海外事業者は東京だけでなく、必ず大阪も意識しています。われわれとしてもネットワーク拠点として東京と大阪を提案できるという意味ではメリットはあります。
大内氏:元々、東京、大阪両方にIT拠点を設置したいと考えているお客さまは、リスクを意識してあえて別々の会社に発注することもありますが、どちらも同じ会社に発注できれば効率性や言語のカベなどを解決できるので、契約や運用後のレポーティング、トラブル時の窓口などをワンストップにすることはメリットになります。
--今後の営業戦略、事業展開について教えてください。
山下氏:海外からの引き合いが多いのは事実ですが、アット東京が海外でDCビジネスを展開するということは、われわれのサービス提供自体が一朝一夕で可能になるものではないため考えていません。ただ、お客さまに価値を提供する上で海外のお客さまにいらしていただくことは大事なことです。そのため、営業活動は今後も積極的に取り組みます。
われわれはセコムのグループ会社ですが、現在セキュリティ事業などのセコムグループの海外拠点がある地域においては、今後アット東京の窓口になってもらいたいとも考えています。これが可能になればグループ全体で、お客さまへの価値提供ができるようになります。
例えば、セキュリティ事業のお客さまが日本に進出を考え、DCやクラウドの接続などが必要となった際に、窓口を紹介することなどをワンストップで提供できれば、グループのお客さまの安心感にもつながるものだと思います。