IDC Japanは3月9日、国内金融IT市場(銀行、保険、証券/その他金融の国内におけるIT支出、ATM、営業店端末のIT支出分も含む)の2018年~2023年の市場予測を発表した。これによると、2020年の国内金融IT市場は前年までのPC更新需要の反動、マイナス金利による業績の悪影響などもあり、市場規模は2兆3425億円で、前年比成長率はマイナス0.6%を予測している。
国内金融機関ではマイナス金利、少子高齢化、地域経済の停滞などによる収益環境の悪化に加え、国内外の有力企業の参入に伴う競争激化で多くの金融機関において業績悪化が懸念されていることから、全体としてはIT支出の抑制が長期化するという。一方で、大手金融機関を中心にDXの取り組みが本格化していることから、これを目的としたIT支出は拡大を予測している。
同社では「DXユースケース」(DXの取り組みをビジネスプロセスに落とし込んだ個々のシナリオ)を各産業分野別にまとめ、DXの進捗状況を分析している。
国内金融機関における取り組みをDXユースケースで分析した場合、すでに着手しやすい営業店機能強化、モバイル経由でのサービス強化、またはRPA・AIを活用した生産性向上などのユースケースでは、多くの金融機関で取り組みが本格化しているが、新しいビジネスモデル構築、またはデータを高度に活用したマーケティング施策、商品開発などのユースケースでは取り組みが比較的遅れているという。
しかし、既存ビジネスの成長性に限界が見えていることから、大手金融機関を中心に新しいビジネスモデル構築の取り組みを開始しており、今後は多くの金融機関で新しいビジネスモデル構築が本格化すると推測。したがって、国内の金融機関のIT支出の中でもDX推進に関連が深い「第3のプラットフォーム市場」(モバイル、クラウド、データアナリティクス、ソーシャルなど)、および「『FinTech』向けIT支出規模」(国内金融機関が「FinTech」サービス提供を目的としたIT支出)では高い成長率で継続して拡大を予測している。
国内金融機関ではDX推進を目的としたIT支出拡大が見込まれますが、既存ビジネスの成長性に限界が見えている中で新しいビジネスモデルの構築が生き残りのためには必須となりつつあるという。
同社のITスペンディンググループ リサーチマネージャーである市村仁氏は「ITサプライヤーは、金融機関の新しいビジネスモデル構築の支援が今後重要となるが、その中でも多くの金融機関が課題として取り組むデータ活用/収益化の支援を行うことが有効である」と分析している。