三菱重工業の子会社でターボ冷凍機やヒートポンプ、ルームエアコンやパッケージエアコン、輸送用冷凍機などの冷熱事業を手掛ける三菱重工サーマルシステムズは、従来、3か月かかっていた空調用ファン形状の最適化探査の作業をわずか10日に短縮することに成功したことを明らかにした。

これは、ヴァイナスが提供するOptimal Solutions Software(OSS)が開発する設計者向け最適設計パッケージシステム 「New Sculptor」を活用することで実現したもの。New SculptorはOSSの形状最適設計モジュールとメッシュ・ジオメトリモーフィングモジュールを組み合わせたもので、他社製品を用いずに「形状モーフィングの設定」「設計変数の設定」「目的関数の設定」「ソルバ自動実行用スクリプトの設定」「パラメータスタディ(実験計画法)」「結果分析」「最適解探査(勾配法)」といった7つのステップの最適解探査を可能とするもの。結果分析は人手を介する必要があるが、そこまでの手順は全自動で処理することが可能で、工数の大幅な削減を実現したという。

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    New Sculptorを用いた最適解探査手順 (画像提供:ヴァイナス)

この結果、形状変更から解析までの一連のプロセスを自動実行することが可能となり、従来手法と比較して約85%の時間短縮に成功したとする。また、探査の成果としても、翼圧力面に対して、静圧が高い領域が減少し急な減速の影響が少ないファン形状を得ることができたほか、翼負圧面に対して、流線の半径方向の偏りと圧力の急変化が少ないファン形状を得ることができたとしている。

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    今回最適化が図られたのはパッケージエアコンの室外機に搭載されるプロペラファン (画像提供:ヴァイナス)

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  • 静圧が高い領域が減少した様子と圧力の急変化と翼根元の流線の偏りが減少した様子 (画像提供:ヴァイナス)

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  • 空調用ファン形状モーフィングの設定と最終的に空調ユニットに搭載されるプロペラファンの形状 (画像提供:ヴァイナス)

なお、三菱重工サーマルシステムズでは今後は、ファン入力に対して影響の大きな設計パラメータだけではなく、他のパラメータによる最適解の探索を行うことで従来の知見にとらわれない性能向上のアイデアの獲得と、流体解析と構造解析の連携による空力性能とファン強度の適正化を目指していく予定としている。