スパコンの性能ランキングとして有名なTop500であるが、その最初のランキングとなったのは1993年6月に発表されたスパコンの性能順のリストである。それから今回のリストで25年を経過したということで祝賀会が行なわれた。

それと同時に、Top500の発表作業の分担が変わった。次の写真に見られるように、Erick Strohmaier氏がセッションリーダーとなり、Jack Dongarra氏、Horst Simon氏とMartin Meuer氏がAdditionalのセッションリーダーとなっている。

なお、最近では発表スライドを投影するスクリーンが広角になり、また、大きく湾曲したスクリーンが使われる。筆者の使っている補正ソフトではこのようなスクリーンに投影されたスライドの歪みを補正しきれず、変に歪んだ画像になってしまっているが、ご容赦願いたい。

  • Top500

    2019年11月のTop500の発表は、25年の祝賀会が行なわれ、それと同時にErick Strohmaier氏がセッションリーダーとなると発表された。そして、Jack Donngarra氏、Host Simon氏、Martin Meuer氏がAdditional Session Leaderとなった

Top500はどのようにして生み出されたのか?

ドイツのMannheim大学のHans Meuer教授は、どのような大型のスパコンがどこに設置されているかを調べてリストを作っていた。一方、Jack Dongarra氏は線形代数の計算方法の専門家で、Basic Linear Algebra Subprograms(BLAS)、Top500の測定にも使われているLINPACKなどの数値計算ライブラリの開発を行っていた。

しかし、網羅性の高いデータを集めるのが大変で、Meuer教授のグループとDonngarra氏のグループが議論した結果、Top500という仕組みを考えだした。そして、To500では、スパコンの所有者が、Dongarra氏の測定法で保有するスパコンの性能を測定し、その結果をDongarra氏のもとに提出してもらい、それを年2回集めて性能ランキングを発表するという仕組みが作られた。

このやり方では性能測定に使うプログラムはLINPACKであり、測定方法が統一される。そして、性能のランキングを付けてリストを発表することで、多くのスパコン保有機関に測定を実施させ、その結果をDongarra氏のもとに登録するインセンティブが生まれた。

Top500の運営体制はどう変わったのか?

このリストの作成やリストに含まれるスパコンの性能の推移などを分析して過去の性能向上の傾向や、今後の性能の向上などの予測を行ったのがHans Meuer教授のもとで共同作業を行っていたEric Strohmaier氏である。

このような経緯から、Top500のリストの作成のリーダーはヨーロッパではHans Meuer教授、アメリカではJack Dongarra氏で、リストの作成や性能向上の傾向や国別のシェアなどの統計はErick Strohmaier氏、そしてHorst Simon氏がリスト作成に協力するという体制でTop500リストの作成が行なわれた。

なお、Hans Meuer教授は2014年に亡くなり、現在は、息子のMartin Meuer氏とThomas Meuer氏の兄弟が後を継いでISCを運営している。

このような状況の中で、Top500は25周年を迎え、Erick Strohmaier氏がTop500のセッションリーダー、Jack Dongarra氏、Horst Simon氏とMartin Meuer氏がAdditional Session Leaderという体制になった。

現実的には、Top500の表彰以外のデータの分析などはErick Strohmaier氏が行ない、発表も行っているので、一番、登壇時間が長い。その意味ではErick Strohmaier氏がセッションリーダーというのは妥当ではないかと思う。そして、Jack Dongarra氏とHorst Simon氏がAdditional Session Leaderというのは良いとして、ISCの運営全般を行うMartin Meuer氏は重要ではあるが、Top500のAdditional Session Leaderというのはちょっと解せない。

また、Green500のWu Feng教授、HPCGのMike Heroux氏がAdditional Session Leaderに入っていない理由も良く分からない。特にWu Feng教授は登壇してGreen500の説明を行っているので、Additional Session Leaderにふさわしいのではないかと思う。

まあ、外から人選に口を出しても仕方がなく、Top500の委員会として、これで円滑に運営できるのであれば結構である。

  • Top500

    Top500の発表の雛壇。右端のマイクを持っているのがHorst Simon氏。右からErick Strohmaier氏、Jack Dongarra氏、Green500のWu Feng氏、HPCGのMichael Heroux氏、Martin Meuer氏

なお、この記事の記述は数十年に亘り、途中で肩書が変わるので、ほとんど肩書を付けないで、すべて○○氏と記述させていただいた。2019年のSC19時点の肩書を記すと、Horst Simon氏はTop500 13位のCoriスパコンを持つLawrence Berkelay 国立研究所のディレクタ代理、Erick Strohmaier氏は、Lawrence Berkelay 国立研究所のシニアサイエンティスト、Jack Dongarra氏はテネシー大学計算機科学科特別栄誉教授ほか、いくつもの研究機関や大学の特別研究員などを務めている。