NECは12月17日、5Gを地域限定で利用する「ローカル5G」事業に本格参入し、企業や自治体向けに提案活動を開始すると発表した。

同社では、端末/デバイス、基地局、クラウド/オンプレミス型コアネットワーク(5GC)、IoT基盤/データ分析AI技術、業種/業務別アプリケーション、運用保守を、パートナー企業とも連携しながらトータルでソリューション提供する。

  • NECのローカル5Gが目指す姿

また、同社は5Gの本格的な商用サービス開始を見据えて、SA(Stand Alone)型5Gコアネットワーク(5GC)を開発、新たに5G導入を進める通信事業者や5Gを地域限定で利用する「ローカル5G」を導入する企業向けに提供を開始。

  • NECの通信事業者向け5G基地局

また、ネットワーク構築にかかるコスト削減やモバイルネットワーク運用を支援するため、オンプレミス型に加えてパブリッククラウド上でNECが5GCを運用し、サービスとして提供する。

  • オンプレミス型(左)とクラウド型の5Gコアネットワーク(右)

NECは12月下旬に受付が始まる28GHz帯のローカル5G免許を申請し、NECの玉川事業場内に開設する顧客との共創施設「ローカル5Gラボ」で利用。本施設では、ローカル5Gの通信環境を顧客に体感してもらうとともに、顧客の機器と5Gネットワークを接続してユースケースの検証が可能。

  • NECの玉川事業場内に「ローカル5Gラボ」を開設

また、NECの子会社でICTシステム機器の開発・製造・販売を行うNECプラットフォームズの甲府およびタイ工場から、2020年度以降にローカル5Gを導入。これらの工場では、作業員の効率化と安全性確保を目的とした多数の搬送ロボット(AGV)の遠隔制御、多品種少量生産で求められるラインの頻繁な変更への対応を目的としたネットワークの無線化、生産性向上を目的とした大量センサ情報の収集・分析などにローカル5Gを活用する。

  • NECプラットフォームズの甲府およびタイ工場にローカル5Gを導入

NECでは、製造、建設、流通、交通、公共の5つの業種に注力し、実証実験を開始する。

  • 製造、建設、流通、交通、公共の5つの業種に注力

NEC ネットワークサービスユニット シニアエグゼクティブ 渡辺望氏

NEC ネットワークサービスユニット シニアエグゼクティブ 渡辺望氏は「IoTの市場規模と課題解決ニーズが明確化している製造、建設、交通の引き合いが強い」と語る。

具体的な用途としては、遠隔操作による要員の省人化や作業員の安全確保、ロボット・AGV同時制御による作業効率化、ネットワーク無線化による生産設備配置自由度の実現、大量のセンサデータ収集にもとづく状況把握、収集データの学習・分析による生産効率化やフィードバックなどを想定している。

  • センサデータ収集にもとづく生産効率化

ローカル5Gは、他のベンダーも提供することを表明しているが、NECの強みについて渡辺氏は、キャリアビジネスの経験で培った知見と、全国規模でのサービス提供・サポート力を挙げ、「End to Endできめ細かなソリューションを提供できる総合力がキーになる」と述べた。

同社では、海外展開も視野にいれているが、当面が国内市場に注力するという。

同社では2023年度までに100以上の企業・団体に提供を目指しているが、「どういう価値が提供できるのかをお客様と一緒に検討していきたい」(渡辺氏)というように、当面は実証実験の要素も強い。渡辺氏は、本格展開は2020年度の後半以降になるとの見通しを示した。