実業務での利用がはじまり、2017年末には全社向けに動画を利用したRPAの啓蒙活動が行われた。その結果、社内から60件以上の業務についてRPA化の希望が集まったという。

「毎日誰かがやるような定常的な業務であるとか、より多くの人が楽になるものという基準で整理していった結果、毎月数分程度、年に数回の頻度、という業務は対応優先度を下げました。中でも効果がありそうだと判断したものが30本強あったのですが、これらのRPA化は2018年3月までに完了しました」と辰巳氏。

さらにこの後、中身が類似していて実質重複していたものやRPA向きではないと判断したものを除き、RPA化を希望する案件はほぼすべてに対応できたという。

イープラス 企画部 企画グループ 久保真氏

そして、2018年4月以降はマーケティング業務でのRPA化に取り組んだという。

「RPA化したのはメールを利用したプロモーションの効果測定です。メール送付対象者のリストを作り、実際にメールを送信する。そのメールからのコンバージョンを測定する、といった業務をそれぞれ別のシステムで行っていたため、一目で全体の効果がわからない状態でした。そのため、毎月データ整理に相当な時間をかけていたのですが、人の判断を要する業務ではないため、自動化できるのではないかと考えました」と語るのは企画部 企画グループの久保真氏だ。

専任の要員が手作業で整理・集計していた業務をRPA化することに成功し、削減された仕事量は年間で約500時間に相当するという。

人の作業では見えなかった基幹システム連携のコツ

社内で多くの業務をRPA化し、はっきりとしたコスト効果も出しているイープラスだが、最初からすべてが順調だったわけではない。導入当初は謎のエラーに悩まされることも多かったという。

「ロボット作成自体はレコーディングやライブラリの組み合わせで直感的に進められるので簡単ですし、簡単なテスト的なロボットはすぐに作れるのですが、業務利用するようなものにはサポートが必須だったと感じています。テストでは動いたものが実際に動かしてみると止まってしまうということがたびたび起こりました」(大川氏)

検証してもシナリオ自体には問題がなく、きちんと最後まで動く日もあれば止まってしまう日もある、という状態に悩まされたという。

「基幹システムとの連携で躓いたのですが、原因がWinActorにあるのか、基幹システム側にあるのかが最初はわかりませんでした。繰り返し検証した結果、基幹システムの動作がロボットの処理速度に追いついていないことがわかりました。人が作業する分には起こり得ない動作不良が、ロボットだと高速すぎるが故に起こってしまうのです。あるタイミングでほんの数秒の待機時間を設けることでスムーズに処理が流れる、というようなコツがあることに気づき運用安定化のヒントを得ることができました」と辰巳氏。

業務への適用スピードを重要視していることからロボットの作成では引き続きネクストウェア社のサポートを受けながらも、メンテナンスのコツを掴んだことで細かな動作検証や保守運用は社内で実施できるようになっているという。

「弊社の基幹システム自体もアップデートしますし、Windows Updateでアプリケーションのレイアウトが変わることもあるでしょう。そういった思わぬ角度からの要因で安定稼働を脅かされることもあるため、品質を維持するための広い視野が必要になってきます。常に万全を期すためのロボットのメンテナンス頻度も決して低くはありません」と辰巳氏は動き出してからの苦労も語った。

「ロボットを身近に」をテーマにさらなる社内展開を目指す

「現在は社内4名で日常的な運用とメンテナンスを担当しています。日々、午前中早い時間帯に動くシナリオが多い中でそれらすべてを確認するわけにはいかないため、適切な時間で終了していないものに絞って確認することで合理化を図っています。ユーザー部門が自身でメンテナンスすることが理想ですが、保守移管を任せるところまではまだ難しいと感じています。ただ、こういう業務はロボット化できるのではないかという意見をよくもらえるのでRPAに対する全社的な興味は以前より確実に高まっていることを感じています」(辰巳氏)

現在は、一昨年前に収集した要望を含め、適用効果が高いと思われる業務のRPA化は収束傾向だという。「RPAに対して積極的な部門からの要望はだいたい手がついたのですが、まだそこまで活用イメージがついていない部門については、おそらくやれることが残っているのではと思っています」と大川氏。

辰巳氏も「今後は費用対効果で見た時に保留され埋もれがちな業務改善などについても、範囲を広げてリクエストを受けて動けるような体制にしたいですね。ロボットを身近に、をテーマとして広く社内に配布して使ってもらいたいと思っています」とさらなる展開への意欲を語った。