企業のシステムといえば、かつてはオンプレミスで自社の要件に合わせ一から構築することが主流だった。しかし、環境変化の激しい時代に入ったことで、長期的な運用におけるギャップが目立つようになってきた。
そんな時代に求められているのが、「作る」から「使う」への転換。すなわち、既存のクラウドサービスを組み合わせ、自社ならではの業務をデザインする取り組みである。
7月16日~17日に開催された「日本DX大賞サミット&アワード」に、オービックビジネスコンサルタントから石倉宏一氏が登壇。クラウド時代に求められる業務デザインのポイントと、具体的な事例などについて語った。
目まぐるしい環境変化に対応するため、クラウド化が求められている
オービックビジネスコンサルタント(OBC)は、業務アプリケーション「奉行」シリーズを開発販売するクラウドベンダーだ。開発からサポートまで全て自社で行っているドメスティック企業であり、とくに経理・財務のクラウドサービス「勘定奉行」で知られている。
また、人事労務や債権債務・販売、発注管理などさまざまな業務領域にも奉行シリーズは展開しており、その対応業務は全部で20業務にも及ぶ。
同社でマーケティングを担当する石倉氏は、企業を取り巻く昨今の状況について、「外部環境の変化が目まぐるしく起きており、業務基盤を柔軟に対応させる必要がある時代」と分析する。
例えば、10年前はマイナンバー制度や、働き方改革の波など、数年に一度の環境変化だったが、ここ最近ではコロナ禍でのデジタルシフト、電子帳簿保存法、インボイス制度、育児介護休業法改正、さらに今後は年末調整での103万円の壁が160万円の壁に変わるなど、環境変化の例を挙げればきりがない。
1年どころか、数か月単位で外部環境が変化する時代において、企業は必然的に「クラウドを選ぶことになる」と同氏は指摘する。
「今後、人材不足が解消されることはなく、コストを支払ってもなかなか必要な人材を確保できない状態が続くでしょう。変化に対して継続的に対応するには、オンプレミスからクラウドへの移行を進める必要が出てくるのです」(石倉氏)
クラウドのメリットは多岐にわたる。具体的には、自動アップデートにより常に最新環境が利用でき、制度改正への対応も容易になること、高度な業務水準を誰でも再現できること、サーバ代やメンテナンスコストが不要になることなどがある。これらのメリットにより、業務の生産性を向上し、人手不足の課題も解消できるわけだ。
網羅性と柔軟性を備えたクラウドサービスの活用で、「作る」から「使う」へ転換
クラウドのメリットを享受するためのキーワードは「Fit to Standard」。これは、今までの業務に合わせてシステムを「作る」のではなく、システムの標準機能に合わせて「使う」という考え方だ。
前者の場合、業務に合わせてシステムを作り込めるため、運用当初の満足度は高くなる。しかし、環境変化への対応が簡単ではないため、運用が長期にわたるとギャップが出てきてしまう。石倉氏はこの状態を「Fit & Gap」と呼ぶ。
一方で、Fit to Standardはシステムに業務を合わせるため、自社の運用とシステムとの間に乖離が生じにくい。結果として、前述したクラウドのメリットを十分に享受できる。
では、Fit to Standardの実現には何が重要になるのか。
同氏がキーワードとして挙げるのが「網羅性」と「柔軟性」である。
業務を標準化するには、基盤となるクラウドサービスが単一のデータベースで幅広い業務に対応している必要がある。すなわち、業務の「網羅性」である。
そして、Excelや紙を用いた自社独自の業務に対して、システムを作り込んでいけるだけの「柔軟性」も必要となる。
「この2つの要素を満たす最適な組み合わせとしてご提案するのが、我々の奉行クラウドと、サイボウズさまのkintoneです。奉行シリーズは全20種類の豊富な業務パッケージをご用意しており、他のクラウドサービスとつなげて広げることが可能です。kintoneは標準のアプリケーションが揃っており、項目を追加することもできます。この2つを組み合わせることで、Fit to Standardが実現できると考えています」(石倉氏)
奉行クラウドとkintoneでFit to Standardを実現した大原商店
奉行クラウドとkintoneを組み合わせてFit to Standardを実現している事例として、石倉氏は和装小物の卸売業を営む大原商店を挙げた。
大原商店では、もともと個別に開発したシステムを利用しており、属人化や生産性の低さが課題となっていた。例えば、営業担当者が紙に受注内容を記入し、それを業務担当者が確認してシステムに手入力するという二重作業が当たり前になっていたという。
そこで、同社はkintoneおよび「商蔵奉行クラウド」を導入。営業がkintoneに入力した受注データが、ボタンひとつで商蔵奉行に反映されるシステムを構築した。その結果、「受注内容が営業から業務担当者に送られる」という業務スタイルそのものは変えずに、業務の標準化を実現。ペーパーレス化により紙管理を廃止でき、照合作業時間も大幅削減、ほしい情報がいつでも集計・出力できるメリットも生まれたという。
「大原商店さまは、kintoneと商蔵奉行クラウドによりFit to Standardを実現されました。その結果、トータルで月に75時間もの業務時間を削減できたとのことです」(石倉氏)
大原商店の事例で成功のポイントとなったのが、バックオフィス業務とフロント業務の連携だ。多くの企業では、これらの業務がつながっておらず、Excelやメール、紙といった手作業ベースで情報をやり取りしている。
なぜいまだにシステムやデータの連携が進んでいないのか。それは、データを利用する担当者と利用目的が異なるからだ。バックオフィス業務では総務や経理がデータを利用するが、フロント業務では経営陣や営業がデータを利用する。また、売上の入力はバックオフィスで行うが、受注のための元データは営業が作成する。業務自体はつながっているにもかかわらず、利用者と目的が異なることで、連携がスムーズにとれない点が問題なのである。
3つの視点で業務を見直し、優先順位をつける
この課題を解消するには、「3つの視点が必要」だと石倉氏は述べる。
「その視点とは、連携頻度、データ量、担当者数の3つです。連携頻度については、日次なのか週次なのか月次なのか。データ量は多いのか少ないのか。業務に関与する担当者の人数が多いのか少ないのか。この3つの視点で業務を見直す必要があるのです」(石倉氏)
連携頻度、データ量、担当者数のいずれも多ければ多いほど、フロント業務とバックオフィス業務を連携させる効果が高いと言えるわけだ。
例えば、財務会計や人事労務、販売仕入といったバックオフィス業務を中心に置いた場合、その周囲には、商談報告・問い合わせ対応・ファイル管理・作業日報・発注申請・取引先申請・売上日報など、さまざまなフロント業務がぶら下がるかたちになる。
これらフロント業務の中には、バックオフィス業務とつながるものもあれば、あまりつながらないものもある。発注申請、取引先申請、売上日報などはバックオフィス業務とつながる業務だ。ということは、バックオフィス業務を担っている基幹システムと連携することで、業務を効率化できる可能性が高いと言えるのである。
さらに、これらの業務を連携頻度とデータ量で分類する。発注申請や売上管理については、「連携頻度が多く、連携のデータ量が多い」ので、優先度を高めるべきだと分かる。
そして、kintoneと商蔵奉行は、まさにこの「売上」と「発注」を標準連携できる組み合わせである。両方のサービスをすでに利用しているなら、Webサイトからプラグインをダウンロードするだけで、追加コストをかけずに連携できる。
石倉氏が講演で語ったように、Fit to Standardを実現するには、網羅性と柔軟性に着目してサービスを選ぶことが重要だ。また、連携頻度、データ量、担当者数の3つの視点から連携効果の高い業務を見極め、各企業に合った業務のやり方をデザインしていく必要がある。そうした取り組みによりDXを推進できれば、環境変化の激しい時代においても企業は競争力を高められることだろう。
関連リンク
- 株式会社オービックビジネスコンサルタント https://www.obc.co.jp/
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