産業技術総合研究所(産総研)は、9月4日から6日にかけて幕張メッセにて開催されている分析機器・科学機器専門展示会「JASIS 2019」にて、すべての波長域の光を吸収する究極の暗黒シートの紹介などを行っている。

黒色素材は、映像や装飾、分光といった分野を中心にさまざまな用途があるものの、既存の光吸収率99%以上の材料の多くは耐久性に乏しく、一般環境での利用が困難という課題があった。暗黒シート研究は、そうした課題を克服することを目的に進められたもので、透明なシリコーンゴムにカーボンブラックを混ぜた材質とすることで、高い耐久性を実現した。

また、量子科学技術研究開発機構の高崎量子応用研究所が有するサイクロトロンによるイオンビーム加工を活用して表面を数十μmの深さに掘った円錐状の空洞構造とすることで、円錐部分の表面をナノオーダーに平坦化。これにより、入射した光は反射して外部に飛び出すことなく、カーボンブラックへと吸収されていくこととなり、結果として光吸収率は可視光域で99.5%、もともとシリコーンゴムが吸収しやすい熱赤外線では99.9%以上を実現できたという。

  • 暗黒シート

    右が今回開発されたシリコーンゴム製暗黒シート。市販の黒色ゴムシートはカメラのフラッシュの光を反射して照っている部分が見られるが、暗黒シートは一切、そういうことが見られないことが分かる

サイクロトロンを活用する、ということで製造コストが問題になりそうではあるが、実際の製造に当たってはナノインプリントのように、プラスチック樹脂を用いたマスタープレート(原盤)を1枚作成。それ(もしくはそこからコピーしたプレート)のパターンをシリコーンゴムに転写するという方法を取り入れることで、ある程度の低コスト化は見込めるという。

担当者としては、「ほかに安価な方法があれば、何でも良いが、表面ざらつきをナノサイズで収めるためには、サイクロトロンクラスのイオンビームでの加工が必要」としているが、その一方で、今回考案した構造に必要な条件は判っており、どのようなイオンをどの程度の強さで使えば、実現できるのか、といったことが見えてきたともしており、今後、その最適なパラメータの解析を進めることで、より安価な製造方法が見つかる可能性もあるとしている。

なお、2019年4月に発表して以降、「使ってみたいという声は、思ってた以上にさまざまな分野からいただいている」というが、産総研がそのままこの技術を商用化するということはないため、これを実際に商用展開するためのパートナーの探索なども進めていければ、としていた。

  • 暗黒シート

    研究担当者である産総研 物理計測標準研究部門 応用放射計測研究グループの雨宮邦招 研究グループ長の手による暗黒シートを使って作った光吸収率99%を誇る世界一黒い鳥こと「タンビカンザシフシチョウ」を上から見た際を模したもの。タンビカンザシフシチョウを知っていて、JASIS 2019に参加される方は、ぜひ産総研ブースで見てきてもらいたい