京都薬科大学は7月16日、ダウン症の胎児の脳の発達不全においてヒト21番染色体に存在し、さまざまな遺伝子の発達調節を行う遺伝子「Erg遺伝子」が関与していることを可能性を示す新たな知見を得たと発表した。

同成果は、同大 病態生化学分野の石原慶一 講師、清水涼平 大学院生、河下映里 助教、秋葉聡 教授、同大 統合薬科学系の高田和幸 教授、理化学研究所 脳神経科学研究センター 神経遺伝研究チームの山川和弘チームリーダー、天野賢治 研究員(研究当時)、下畑充志 研究員(現 日本医科大学)、国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センターの左合治彦センター長、摂南大学 薬学部の奈邉健 教授らで構成された国際共同研究グループによるもの。詳細は、国際神経病理学会(International Society of Neuropathology)誌「Brain Pathology」にEarly Viewとしてオンライン掲載された

ダウン症は700~1000人に1人の割合で生まれるとされている染色体異常で、通常は2本の21番染色体が3本になることで、精神発達の遅れや記憶学習障害などさまざまな症状を示すことが知られている。

研究グループはこれまで、ダウン症モデルマウス胎児の大脳皮質で神経細胞数が低下することで、脳の発達不全になると報告をしていたが、この原因は不明のままであった。

今回の研究では、ダウン症モデルマウス胎児の脳にあらわれる遺伝子群を網羅的に調べることで、炎症関連遺伝子としてErgが増加することで、脳免疫細胞と炎症性細胞の均衡異常が引き起こされること、ならびにトリソミー領域内のErg遺伝子を正常に戻すことで、炎症関連遺伝子群の増加や、脳免疫細胞と炎症性細胞の均衡異常と神経細胞数の低下が改善することを発見したという。

なお、今回の成果について研究グループでは、ダウン症の胎内治療法の開発と実現化に大きく貢献することが期待できると説明している。

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    今回の研究成果の概要 (出所:京都薬科大Webサイト)