NTT東日本が、中小企業向けに2018年11月にリリースした「工場向けIoTパッケージ」の開発にあたって、1年間行われたトライアルに参加した2社うちの1社が埼玉県川口市で板金加工及び塗装を専門とするトーメックスだ。

同社は1955年創業した塗装会社である友栄塗装の設備部門として、1968年に発足。現在は埼玉県の本社以外に茨城県と福島県にも拠点を展開している。主に金属建材、店舗什器、自動車部品等を手がけるが、市場ニーズに合わせて少量多品種に対応しているという。

NTT東日本が提供する「工場向けIoTパッケージ」は、工場に設置されている製造機器の異常を検知するためのもので、パトライトの信号と監視カメラによって検知する。パッケージは、センサー装置やネットワークカメラなどのIoTデバイスと、データ可視化用のIoTクラウド、IoTセキュリティ、IoTゲートウェイであるWi-Fiに加え、それらの運用サポートをセットにしたもの。

  • 「工場向けIoTパッケージ」

「経費の中で一番高いのは人件費です。そこで、保有する機器の中でも24時間無人で動かすことができる機種で使ってみることにしました。止まっている無駄な時間を減らしたいというのが機器選定のポイントです」と語るのは、トーメックス 営業部 課長 滝沢康生氏だ。

  • トーメックス 営業部 課長 滝沢康生氏

IoTパッケージが適用されたのは、複合機であるMOTORUM-2048HYBRID。利用にあたってはパトライト製の稼働状況監視・通知を行う信号灯が必要だが、これは元々取り付けてあった機器だという。これに、信号データをWi-Fiを通じてクラウドに送信するセンサーなどを追加し、監視カメラと組み合わせて稼働状況の監視や停止時の通知を実現する。

  • IoTパッケージが適用されている「MOTORUM-2048HYBRID」

  • 機器の状態を知らせるパトライトと監視カメラ。パトライトの先端についているグレーのものがセンサー

「日中の作業を終え、退社前に夜間作業させるための材料と指示を機器にセットしておきます。予定通りであれば朝出勤すると、作業が終わっているはずですが、異常を検知して途中で作業が止まってしまっていることがあります。場合によっては、退社後、15分や30分ほどで停止していたということもあります」(滝沢氏)

機器の操作には専門的な知識が必要で、見つけた人がすぐに対応することができない。そのため、IoTパッケージ導入以前は、異常停止に気づいた場合は、担当者を呼び出していたという。

「退社直後に電話をもらうこともあれば、夜連絡が来ることもありました。納期が迫っていない場合は、翌日対応で大丈夫ですが、やはり停止していると聞けば気になります。風呂上がりに制服に着替えて出社することもありました。納期が迫っている場合には、夜間つきっきりで対応していました」とMOTORUM-2048HYBRIDを担当する製造部 係長 小林潤氏は振り返る。

  • トーメックス 製造部 係長 小林潤氏