IDC Japanは4月22日、クライアント仮想化市場に関連する各種テクノロジーを体系的に評価する「IDC TechScape: Worldwide Virtual Client Computing 2018」を発表した。これは、IT部門に所属するテクノロジープロフェッショナル向けの戦略的プランニングツールであると同時に、戦術的意思決定ツールでもあり、対象者はCIOおよび上級テクノロジープロフェッショナル、ストラテジスト、IT部門またはビジネス部門のIT担当者などを含む。

  • 2018年の世界クライアント仮想化市場における3つのタイプ

    2018年の世界クライアント仮想化市場における3つのタイプ

同レポートは、総合的なフレームワークに基づく評価モデルであり、テクノロジーの相互関係、特定の市場における短期・長期的な成功要因との関連において、最新の市場分析を基に各テクノロジーの導入の進捗度合いを評価している。

クライアント仮想化市場に関する同レポートの目的は、上級エグゼクティブが自社のテクノロジー環境を評価するにあたり、クライアント仮想化業界全体におけるテクノロジー導入の進捗度合いに関するアナリストの評価と足並みが揃っているかどうかを判断できるようにすることだという。

また、新しい破壊的なテクノロジーの導入の進捗度合いを示す「変革型」、メインストリームのテクノロジーユーザーによる最新のITベストプラクティスへの適合状況を表す「改善型」、採用を選択した企業に運用上の優位性を確実にもたらす補強型テクノロジーの導入の進捗度合いを示す「補強型」の、3つのタイプのテクノロジーを示すように設計した。

同社は、IT戦略を担当するエグゼクティブが同レポートを利用する目的として「自社で進めているテクノロジー導入への取り組みの業界全体と比較した評価」「自社のテクノロジーロードマップに追加するか検討すべき新しいテクノロジーの特定」「自社のテクノロジーに関する意思決定フレームワークの信頼性をさらに高め新しい知見を取り入れる」の3点を想定している。

クライアント仮想化の技術は、その根源に当たるシンクライアントがパーソナルコンピューティングの黎明期に創造され、その後はクライアント仮想化という形態に発展し、現在ではその根幹を成す基本的テクノロジーは成熟期に差し掛かっているという。

このクライアント仮想化では、IT市場全体の変化に伴い大幅な転換が始まっていると同社は指摘する。

仮想端末における標的型対策、多要素認証、SSOなどの組み込み、またインフラ環境における、クライアント仮想化ソフトウェア、ハイパーバイザー、コンピューティング、ストレージ、サーバ、ネットワークなどにどのように集約、結合、再配置するかなどを含め、クライアント仮想化はHCI(Hyper Converged Infrastructure)、SDS(Software-Defined Storage)、SD-WAN(Software-Defined WAN)との融合など、新しいタイプのデジタル、物理、サービスインテグレーションなどを提供する必要に迫られているという。

さらに、アナリティクスの採用やコグニティブを組み込んだ運用などにも発展している。加えて、サービス型クライアント仮想化(DaaS)に、CASB、SSO、EDRなどのクラウドサービスを組み込んだサービスや、月額払いなど契約形態の進化を含めると、物理ハードウェア、運用サポートサービス、デジタルシステムインテグレーションも含め、包括的なマネージド型のサービス契約が可能になっている。

米IDC IT Service / Virtual Client Computing担当のリサーチマネージャーであるシャノン・カルバー氏は「クライアント仮想化は今後5年間で、デジタルワークプレイス及びデジタルワークスペースに統合、集約された形態へ進化していくとIDCでは予測している。この進化には、アナリティクス、コグニティブ、IoTとの深い統合が含まれる。ただし、ワークプレイス/ワークスペースの設計スキルの不足が、これらの進化を阻む要因になると考えられる」と述べている。

IDC Japan PC,携帯端末&クライアントソリューションのシニアマーケットアナリストである渋谷寛氏は「国内クライアント仮想化テクノロジーの変遷は、多くのテクノロジーベンダーがリードする世界(特に米国)市場のロードマップに準じている。アナリティクス、コグニティブ、IoTなどとの連携も、若干の遅れはあるものの、追随していくと考えられる。国内のリーディングベンダーや、作り込みが得意なシステムインテグレーター/サービス事業者が、デジタルワークスペースの進化/深化に影響を及ぼすであろう」と推測している。