製造現場で発生する機械の故障や不良品の発生を、センサーを活用し異常をいち早く捉え対策を行い、被害の拡大を抑える。これら一連のプロセスは予知保全と呼ばれているが、現在センサーデータの解析にAIを活用することでその正確性が増すため注目されている。SCSKは、この予知保全を可能とする米国のFalkonry社の時系列データ解析ソリューションを春のITイベント「第28回 Japan IT Week 春 前期」に出展している。その内容についてレポートしよう。

  • 第28回 Japan IT Week 春 前期」のSCSKブースより

    「第28回 Japan IT Week 春 前期」のSCSKブースより

SCSKが展示しているのは、同社が昨年10月に販売代理店契約を締結を発表した米国Falkonry社のAIを活用した時系列データを解析するソリューション「Falkonry LRS」。Falkonry社は、米国カルフォルニア州のシリコンバレー企業でAIを使ったパターン認識技術に定評のある注目のベンチャー企業だ。

  • SCSKブースでのFalkonry LRSの解説コーナー

    SCSKブースでのFalkonry LRSの解説コーナー

Falkonry RLSは、最新のIoT機器のセンサーなどで収集したデータを生かし切れていないと感じている企業にその力を発揮する。センサーデータを解析し、製造機械の故障や不良品の発生、その他を含めてトラブル発生の予兆を捉え、警告することができる予知保全ソリューションとなる。Falkonry RLSの特長は、センサーが収集する様々なデータの波長を解析する時系列データ専門のAI解析ソリューションであることだ。センサーよって収集されるデータには、温度、振動、圧力などがあるが、それらのデータを時系列にまとめたのが波形データだ。機械などの検査対象が正常に動いている場合は、ある一定の動きを繰り返す。これらをベースに機械学習を行い、最終的には人が察知できないような僅かな波形の乱れから異常を検知できるようになる。

  • alkonry LRSに取り込まれたセンサーデータ。前もって設定されたカテゴリーをもとにAIは波形データを分類し、自動的に予測モデルを作成する。あとは、教師データなしでクラスタリングを実施し、特徴あるパターンを自動的に抽出して予測モデルを再構築する
  • alkonry LRSに取り込まれたセンサーデータ。前もって設定されたカテゴリーをもとにAIは波形データを分類し、自動的に予測モデルを作成する。あとは、教師データなしでクラスタリングを実施し、特徴あるパターンを自動的に抽出して予測モデルを再構築する
  • Falkonry LRSに取り込まれたセンサーデータ。前もって設定されたカテゴリーをもとにAIは波形データを分類し、自動的に予測モデルを作成する。あとは、教師データなしでクラスタリングを実施し、特徴あるパターンを自動的に抽出して予測モデルを再構築する

Falkonry LRSにセンサーデータを取り込むと自動的に波形データを分類しカラー分けしてくれる。オペレータは、このカラー分けされたパターンにUnknown、Fault、Maintenance、Normal、Warningなどのラベル付けを行う。これにより、トラブル発生前のパターンの変化を通知できるようになる。これらの作業は特に専門的な知識を必要とせず簡単に行えるそうだ。

  • 機械学習により分類されたパターンにUnknown、Fault、Maintenance、Normal、Warningなどのラベルを実装出来る。これにより、異常が発生した場合、設定したラベルにより機械の異常を察知する

    機械学習により分類されたパターンにUnknown、Fault、Maintenance、Normal、Warningなどのラベルを実装出来る。これにより、異常が発生した場合、設定したラベルにより機械の異常を察知する

Falkonryでは、独自のセンサーの提供を行っていない。これは、Falkonryのもう一つの利点で、既存のセンサーのデータをそのまま活用してソリューションを展開する形となっているので、新たに設備を増強する必要がなく、短期間での導入も可能だ。同ソフトウェアは、時系列分析ソリューションであるため、基盤や制御システムなどに依存性が低く既存のシステムに簡単に統合できる。異なるメーカーやプロトコルを使用する設備でも一括管理が可能な上、連携のためのAPIも用意されており、他のBIツールやユーザーの既存ソリューションへの組み込みもできる。

クラウド版以外にもオンプレミス版も選択可能なので重要なデータを外部に持ち出さずに利用することもでき、センター部分でデータを解析する「Falkonry LRS」と現場の産業機械のエッジ領域でリアルタイムに異常を検知し、通知する「Falkonry Edge」から成っている。

  • Falkonryの概要図。同社Webぺージより

    Falkonryの概要図。同社Webぺージより

同製品は、自動車メーカーにおいて製造自動車の品質評価に活用され、ベテラン検査員を使っていた属人的な検査基準を平準化し、製造品質を均一化することに成功し不良品の大量発生を防いだり、石油・ガス生産現場においては、産業機械の故障の予兆を検知することで、機械の停止時間を削減しコスト削減と生産量増大に貢献しているそうだ。テクノロジーのベースは、時系列データのAI解析にあるため、産業機械だけでなく、他の様々な分野においても活用できる潜在能力を秘めているのではないだろうか。