Slack Japanは4月9日、同社が3月初旬に移転した新オフィスを東京・大手町をメディア向けに公開した。また、米Slack Technologies CEOのスチュワート・バターフィールド氏が来日し、同社製品の基本方針や日本における最新事例について説明した。

「縁側」を意識したオフィス

新オフィスは、東京・大手町の大手町パークビルの17階にあり、地下鉄大手町駅に直結。皇居の緑を一望できる場所にある。床面積は、約1400平方メートルで、最大80人の社員が勤務できるという。世界で10番目のオフィスとなる。

  • Slackの新たな東京オフィスの受付

    Slackの新たな東京オフィスの受付

Slack Japan カントリーマネジャーの佐々木聖治氏は「すべてのビジネスユーザーに利用してもらうことを目指しており、その観点から大手企業や金融系企業など、日本の代表的企業が集まる大手町、丸の内エリアを選んだ」と説明。

  • Slack Japan カントリーマネジャーの佐々木聖治氏

    Slack Japan カントリーマネジャーの佐々木聖治氏

複数の会議室やセミナールームに加えて、オフィスにビジネスコラボレーションハブという役割を持たすために、コワーキングスペースを設置しているのが特徴で「社員とお客様が、コラボレーションを念頭に仕事を進めることを重視して設計した」という。

  • 会議室の様子。会議室には「OMAKASE」「HAJIMARI」などの日本の言葉を使っている

    会議室の様子。会議室には「OMAKASE」「HAJIMARI」などの日本の言葉を使っている

  • 日本の建築様式を取り入れたオフィス内

    日本の建築様式を取り入れたオフィス内

家屋の中と外をつなぐ「縁側」という日本の建築様式を採用し、オフィスを横断する長い「縁側」スペースを、皇居に面する西側窓前面に沿って設けており、これに沿って、カフェや会議室などの機能を持った空間を用意している。

  • 床面の黒塗装は日本庭園の池をイメージし、石のそこにかかる橋をイメージしたという

    床面の黒塗装は日本庭園の池をイメージし、石のそこにかかる橋をイメージしたという

  • 左官職人による手塗りの壁

    左官職人による手塗りの壁

さらに、乳幼児の保護者のためのマザーズルーム、社員の健康維持のためのマッサージルームなどを備えている。新オフィスのデザインは、SUPPOSE DESIGN OFFICEが行ったという。

  • オープンスペースの様子

    オープンスペースの様子

  • カフェスペースの様子。アルコールも置いてある

    カフェスペースの様子。アルコールも置いてある

佐々木氏は「Slackはオープンで、透明性の高いデジタルハブを提供しているが、物理的にこれを実現するのが、新オフィスだ。『縁側』はその象徴となる。京都の枯山水をイメージするものであり、黒い柱が景色を絵のように切り取ってくれる。こうした環境を味わってもらいながら、新たな働き方のシーンを実現する場として使ってもらいたい」とした。

バターフィールド氏は「とても美しいオフィスであり、自然を取り込んでいることが素晴らしいと感じている。外部企業とのコラボレーションスペースとして活用してもらい、パートナーとのエコシステムの構築にも活用したい」と述べた。

  • 米Slack Technologies CEOのスチュワート・バターフィールド氏

    米Slack Technologies CEOのスチュワート・バターフィールド氏

また、佐々木氏は「Slackは、オフィスに社員に一人一席を用意している。これは、Slackというコラボレーションツールを利用する会社においても、実際に社員が対面で仕事をすることを重視しているからである」と説明。

そして、バターフィールド氏は「創業時から、このスタイルは変えておらず、様々な形でのコラボレーションを促進することを重視しており、柔軟性を持ったコラボレーションが可能である」と述べている。

「Slack」の基本方針と日本における事例

バターフィールド氏は「Slackは、これから大きく変化をしていくことになる。また、様々な外部のアプリなどと統合することで、Slackはプラットフォームしていくことになる。AIの活用によるインテリジェンスも大きな変化になる」などと強調する。

さらに「Slackはビジネスの効率性を高め、ビジネスをやり遂げるための調和を実現することで、企業の変革につなげることができる。そして、日本の働き方改革を加速する触媒になる。日本の顧客と深い関係を築いており、これからもその姿勢は変わらず、日本の市場にコミットしていく」と同氏は語った。

また、米Slack Technologies エンタープライズプロダクト部門責任者のイラン・フランク氏は「企業は大きな変革のなかにあるが、企業のコミュニケーションを活性化し、意思統一を行うことが変革を行うための条件の1つとなる。変革を実現するのはチャットではなく、ワークフローである」と説明する。

  • 米Slack Technologies エンタープライズプロダクト部門責任者のイラン・フランク氏

    米Slack Technologies エンタープライズプロダクト部門責任者のイラン・フランク氏

同氏は「基本的な機能であるメッセージング、eメールなどの様々なコミュニケーションを一本化するチャンネル、一元的に統合して、管理が可能なダッシュボードによるインテグレーション、データやアプリ、人を結合するワークフロー、さらに有益な情報ソリューションを提供するためのAIという5つのレイヤーで機能を提供することができるのがSlackの特徴である」と続けた。

  • 5つのレイヤー

    5つのレイヤー

なかでも、Slack独自ともいえる「チャンネル」という概念についてフランク氏は強調する。「他の組織との情報共有や全社での共有、社内の他のユーザーとの共有、ゲストのチャンネル参加など、異なるフォーマットを一元的なツールによってカバーするとができる。チャンネルというレイヤーにフォーカスしているSlackによって、人、チーム、部門、組織、コミュニケーションを通じて、認識の醸成を実現できる。現状では、個々のチームや組織ごとにチャンネルを活用しているが、今後はビジネス界全体に広がっていくことになる。すでに、8万5000社以上がSlackを活用している」と、胸を張っていた。

  • チャンネルが業務を支える基盤だという

    チャンネルが業務を支える基盤だという

また、日本での新たな導入事例についても紹介された。近畿大学では、2019年4月から全職員を対象にSlackを導入し、遠隔地のキャンパスや拠点内に所属する職員とのコミュニケーションに活用している。

卒業生と在学生が交流するKINDAIサミットのような部署を横断するプロジェクトにおいて、運営に関わるメンバー同士が、Slackを使って、リアルタイムでやりとりできるようにするという。同大では、2017年4月から段階的にSlackを導入してきた経緯がある。今後、国内外の多様なアプリとの連携を進め、業務全体の効率化の実現を目指す。

角川ドワンゴ学園が運営するN高等学校では、2016年の開校以来、Slackを全校で導入しており、日々の学習やコミュニケーションのために、生徒や職員を含めた数1000人規模で、Slackを活用している。また、200を超える同好会と、9つの学校公認の部活においては、パブリックチャンネルを開設しており、ここでもSlackを活用しているという。

導入した理由として、運営母体であるドワンゴでSlackを活用してすること、プログラミング授業との親和性が高いこと、企業での利用が増加しているSlackを利用することで、就業機会の増加にもつながることを挙げていた。