米IBMは3月6日(現地時間)、IBM Institute for Business Value(IBV)による最新の調査を発表した。これによると、多くの組織がいまだに女性の登用を正式なビジネス上の優先事項としておらず、世界中の職場で管理職のジェンダー格差が根強く残っていることが明らかになったという。
「Women, Leadership, and the Priority Paradox(女性と管理職、優先事項をめぐるパラドックス)」と題したグローバルな調査では、IBVとOxford Economicsが共同で管理職でいまだにジェンダー格差が見られる理由と、ジェンダー平等に向けた動きを促進するためにできることについて理解を深めることを目的とし、世界中のさまざまな業界の組織から参加した2300人のエグゼクティブと担当者(男女同数)を対象に実施。定性調査のほかにも、IBVは世界の6つの地域でエグゼクティブや担当者に対して1対1のインタビューを重ねた。
調査では、対象となった組織の上級管理職に占める女性の割合がわずか18%であることが浮き彫りとなり、その主な要因として「多くの組織がそのビジネス価値を認めていない」「男性が職場におけるジェンダー・バイアスの程度を過小評価している」「この問題に対して危機感や当事者意識を示している組織が少ない」3点が判明した。
ビジネス価値を認めていないことについては、回答者の79%がジェンダー平等と経済的成功や競争優位性の向上との相関関係を示す十分な証拠があるにもかかわらず「組織内で管理職のジェンダー平等を促進する取り組みがいまだに正式な優先事項とされていない」と回答している。
男性によるジェンダー・バイアスの程度を過小評価している点に関しては、男性エグゼクティブの65%が同等の役職に就いている女性の数が少ない現状も顧みず「たとえ自分が女性だったとしてもおそらく幹部に登用されていたはずだ」と答えている。
危機感や当事者意識を示している組織が少ないことでは、多くの組織において統制のとれた業務執行により業績向上にむけ取り組みを進めているが、ダイバーシティーの問題となると「善意」に頼りすぎていて、放任的な態度をとっているという。
こうした障害があるにもかかわらず、管理職でのジェンダー平等の実現に向け、熱心に取り組んでいる(レポートでは「ファースト・ムーバー(先行者)」と呼ばれている)一連の組織が存在し、サンプル全体のうち12%を占めるこれらの組織は、以下の3つのインクルーシブな環境を醸成する共通の特徴と価値観を持ち、その流れを生み出す方法について他の組織の参考になるロードマップを示している。
1つ目は、すべてのファースト・ムーバーはいずれの組織も管理職への女性の登用を正式なビジネス上の優先事項とし、2つ目はジェンダー・インクルーシブな組織のほうが経済的に成功するという考えを認めている。3つ目は企業が職場でのジェンダー平等の実現に向け変化を起こし続ける必要があることを認めており、調査ではその他の組織も大半がこれに同意しているが、行動を取ることへの熱意はファースト・ムーバーのほうが29%高いという結果が出ている。
また、同調査から、職場でジェンダー平等を促進する文化を生み出すための重要なステップに関する指針も示されており、変化の推進を目指す組織では組織のあらゆるレベルで業績の目標とインセンティブに直接影響を及ぼす具体的な取り組みを進める必要があるという。
調査によって示された変化へのロードマップには「管理職におけるジェンダー平等をビジネス上の優先事項とす」「インクルージョン文化を創出する」「経営幹部がジェンダー平等の実現に対する責任を持つ」といった必須事項が含まれている。
管理職のジェンダー平等をビジネス上の優先事項とすることに関しては、その他すべての正式なビジネス上の優先事項と同様に、女性の登用を重要業績評価指標(KPI)、予算、リソースの割り当てとともに組織の正式な事業計画に組み込むことにより、その取り組みを正当化するほか、変化を指揮する上級管理者を1人以上選任する。
インクルージョン文化を創出する点については、ファースト・ムーバーの大多数のように組織の戦略的ミッション・ステートメントにジェンダー平等を加え、柔軟な労働形態と正式な支援活動をサポートするための計画を立案する。
経営幹部が責任を持つことに関しては、管理職への女性の登用をビジネス上重要な戦略的優先事項とする権限を実際に持つ上級管理者を対象とし、取締役会がビジネスの成長に対して、受託者責任の一環である役割を果たせる場として機能スべきだと指摘している。