レッドブルエアレース2019の第1戦となるアブダビ大会で、室屋義秀選手は予選と本戦の両方で1位という完全勝利を果たした。室屋選手の優勝は、年間チャンピオンになった2017年最終戦のインディアナポリス大会以来だ。

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    (C)Redbull Content Pool

予選ポイントでまず3点リード

「僕、予選得意なんです」

大会前に冗談交じりに語っていた室屋選手だが、初戦から強さを証明して見せた。

  • 予選前の風景

    予選前、リラックスした表情の室屋選手 (C)大貫剛

昨年まで、予選は本戦の組み合わせを決めるためのもので、何位になっても年間チャンピオンシップレースには直接関係しなかったのだが、今年はルールが変更。予選1位の選手には3点、2位には2点、3位には1点が与えられることになった。その新ルールによる最初の3点を室屋選手が勝ち取った。

とはいえ、室屋選手の予選タイムが53.024秒だったのに対し、ペナルティ加算前の実測時間ではなんと14選手中10選手が53秒台。上位選手でも1秒のペナルティを受ければ逆転されてしまう僅差でしかなく、本戦は予断を許さない接戦が予想された。

わずか20cm、接戦を制し1年ぶりの優勝

2日目の本戦では前日と打って変わって、多くの選手がペナルティを加算される波乱の展開になった。原因は陸側から吹く風で、追い風を受けながら急旋回して通過するゲート7と14(同じゲートの1周目と2周目)の通過が苦しくなり、機体を水平に戻すのが間に合わない「インコレクトレベル」で2秒のペナルティ。また、今年から新設された「11G以上が一瞬でもあれば1秒のペナルティ」に対応しきれない選手も多かった。

室屋選手はペナルティなしで「ラウンド・オブ14」「ラウンド・オブ8」を勝ち抜き、決勝の「ファイナル4」に進出。ゲート14での「インコレクトレベル」が疑われ画像判定となるほど、ギリギリまで攻めた飛行だったが、判定結果はペナルティにならず、53.780秒と記録された。その後、昨年チャンピオンのマルティン・ソンカ選手(チェコ)がわずか0.003秒差の53.783秒でゴールし、室屋選手の優勝が決まった。0.003秒は距離に直すと約20cmで、プロペラ1枚分ほどの僅差だった。

  • マルティン・ソンカ選手

    昨年チャンピオンのマルティン・ソンカ選手(チェコ)は、今年も最大のライバルになりそう (C)大貫剛

室屋選手は「チームの力やトレーニング、いろんなものが合わさって20cm、マルティンを上回った。今回は会心の勝利と言っていいんじゃないですかね」と、爽やかな笑顔で語った室屋選手。予選で3点、本戦で25点の合計28点を得る快挙で、2位のソンカ選手に早くも6点差をつけた。

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  • 練習から本戦まで終始安定した飛行を見せた室屋選手、接戦を制した (C)Redbull Content Pool

  • 表彰台

    表彰台に1年ぶりの君が代が流れた。右は3位のマイケル・グーリアン選手(アメリカ) (C)大貫剛

9月の千葉大会開催決定も、第2戦が未定

ただ、ひとつ残る心配事は、5月に予定されている第2戦の開催地が未定のままということ。このほか、9月に予定されている第5戦千葉大会に続く第6戦も未定だ。室屋選手をはじめ各チームも遠征準備が整わず困惑している様子だ。

  • チームファルケン

    万全の態勢でスタートを切ったチームファルケン。室屋選手は「チーム福島、チーム日本でもある。コックピットでは1人だが、応援してくれる皆さんと飛んでいる」と語った (C)Redbull Content Pool