AI活用が話題になった2018年。その中でも業務効率化のために導入が進んだRPAと組み合わせることで、紙ベースの業務も効率化できると注目されたのが、手書き文字認識ができるAI OCR「Tegaki」だ。この製品を開発するCogent Labs(コージェントラボ) 代表取締役 飯沼純氏に、2018年の振り返りと2019年の展望について聞いた。

  • Cogent Labs(コージェントラボ) 代表取締役 飯沼純氏

    Cogent Labs 代表取締役 飯沼純氏

セールスフォース・ドットコムの13番目の社員として、創業当初より15年間、同社のSaaS業界における急速な成長に貢献。幅広い業界・企業規模に対するソリューションとビジネスアプリケーション提案を牽引。ディープラーニングをはじめ、社会を変える最先端>技術の実ビジネス活用を信じ、Cogent Labsを共同設立。

2018年はAIがバズワードになった年ですが、御社のトピックは何になりますか?

飯沼氏:AIがよりビジネスに活用されることが浸透した年だと感じています。会社としては大きく2つあり、1つ目は現在のわれわれのメインプロダクトとなっている「Tegaki」が、ソフトバンクの「SynchRoid」をはじめとするパートナーとマーケットインすることができるなど、1つのテクノロジーとパートナーシップをうまく作っていくことにフォーカスできた年だと思っています。

2つ目は、採用に注目しました。AIをどんどん開発してマーケットにインストールしていかなければならない中、いかに優秀なエンジニアを海外から採用してくるか、よりマーケットに合ったAIをどう作るかにフォーカスしました。世界中からエンジニアとリサーチャーを採用し、日本に合うAIを作ったのがポイントです。

6月には、経済産業省のJ-Startup企業に認定され、これは2018年にやってきたことへの評価だと思っています。

採用は、なぜ海外からなのでしょうか?

飯沼氏:われわれの研究者やエンジニアはほとんどが外国人ですが、日本人を避けているわけではなく、優秀な人という基準から国籍に関係なく採用し、インターナショナルな会社をつくると決めていました。最新のAIやアルゴリズムの研究がどこにあるのか、最先端の研究やナレッジはどこにあるのかということから採用を考えています。

海外から優秀なメンバーが集まってくれるということは、企業として向かっている方向は間違いではないということでしょうし、やろうとしていることに対する魅力があるということです。日本のマーケットにAIをどう伝え、提供していくかを考えた時、彼らから見るAIのマーケットとしての日本というのは面白いポイントなのだと思います。

世界各国から優秀な人たちがアジアや日本の問題をどう解いていくかに興味を持っていただいているので、そういったことを意識しながら採用を考えています。

2018年は、当初目標に掲げていたビジネスのうち、どれくらいが達成できたのでしょうか?

飯沼氏:かなり出来ていると思っています。テクノロジーだけではマーケットはつくれないので、既存企業やテクノロジーと融合させることによって、素早くマーケットインさせることができるようになります。2018年に関していえば、「Tegaki」がAI OCR+RPAという形でマーケットインできました。

また、並行してて自然言語理解エンジンKaidokuほか、大和証券様と開発した予測エンジン「Time Series Forecasting」をプロダクションレベルでリリースできました。安定的にAIというものをマーケットにディストリビューションできたのは、大きなポイントだと思っています。

自社の強みは手書き文字を認識できる「Tegaki」の存在だと考えていますか?

飯沼氏:製品の強みと自社の強みというものがあります。企業としての強みはテクノロジーベースで考えるといくつかあります。

AIをマーケットにデリバリーするにあたって大事なことは、まず精度です。そして、それをどうやってデプロイするかというスピードがあります。AIというのはブラックボックスなので、コンフィデンスというのが3つ目のキーワードになります。さらに、高い精度でトレーニングするために、トレーニングしやすいテクノロジーを作れるかが4つ目になります。この4つの柱を高いレベルで維持することが企業としては重要なポイントで、弊社は他社に比べると精度が高く、さらにスピーディで、信用を維持しながら追加開発して精度を上げていくこともできていると思います。

日本語の手書き文字認識の開発において、難しいのはどういうところなのでしょうか?

飯沼氏:日本語は他言語に比べると、ひらがな、カタカナ、漢字とあり、日本語の文章中に英語が入るなど、3~4つの表記を組み合わせて文章や言葉ができています。この複数のキャラクターを使いながら構成しているという難しさがあります。

もう1つは、中国語や韓国語にも通じることだと思いますが、文字が組み合わさると別の文字になることがあります。たとえば「人」と「本」が合わさると「体」になります。これらを理解させるのが難しいですね。英語になると使うキャラクターが少ないのでトレーニングしやすいのですが、日本語は難しいですね。