試験所・校正機関が正確な測定・校正結果を生み出す能力があるかどうかを、第三者認定機関が認定する規格「ISO/IEC 17025」。同認定取得により、製品管理・品質管理を行う上でのマネージメント力と、信頼性のある試験・校正結果を生み出す技術力が国際的に認められていることをアピールできるようになるが、1999年の発行以来、2005年に改訂がなされたほか、2017年11月にさらなる改訂版(2017年版)が発行された(JIS版となるJIS Q 17025:2018も2018年7月に発行された)。
2017年版は、基本的には2005年版を踏襲しつつ、不明瞭な部分を明確化することなどを目的としたものとなっており、現場のパフォーマンス向上に向け、要求事項の表現の簡素化な、あいまいな部分の低減がなされた。また、最大の特徴は、10年以上の間に劇的に進化したデジタルへの対応が盛り込まれた点となる。
また、「2005年版では、主に紙に印刷された状態のデータを前提として策定されていたが、2017年版ははじめからデータ化されていることを前提としており、よりデータや情報の管理の厳密化が求められたものとなっている」とアジレント・テクノロジーの市場開発グループ ラボインフォマティクス担当である西山大介氏は説明する。
例えば、ISO/IEC 17000シリーズ文書の規格構造を統一するISOの方針に基づき、規格の章立てが変更された。また、その中の箇条7「プロセス要求事項」の7.11がデータの管理に対する具体的な文言が記載される部分となるが、その基本は、必要なデータや情報が読める状態でアクセス可能であることを前提に、アクセス権限を設定することにより誰でも見れる状態ではないこと、セキュア性が担保されていること、データの改変に対するトレーサビリティが確保されていること、データや情報に変更がなされていない(データインテグリティ対策が施されている)こと、システム障害などが発生した場合でもデータが保持されていること、といったことなどが記載されている。
こうした要求すべてに対応できなければ、認定を取得することができなくなる。現在、2005年版を取得していたとしても、2017年版への移行が必須であり、移行期限である2020年11月30日まで移行が完了しない場合、移行期限翌日に一時停止状態とない、再度認定を取得しなおす必要がある(すでに2018年7月以降は2005年版による認定申請の受付は終了している)。
こうした認定基準を満たすためには、相応の労力が求められることとなるわけだが、この改訂を受け、メディア向けの説明会を開催したアジレントでは、データインテグリティを確保するソリューションとして「Agilent OpenLab」を提供しているとする。
Agilent OpenLabは、大きくわけて、それぞれの機器とPCが独立した状態(他のネットワークに接続されていない状態)での利用を前提とした「OpenLab CDS2 スタンドアローンシステム」、ネットワーク越しに、拠点内の接続されたどのPCからでも、どの分析装置(対象となるのは同社のGC,LC、GC/LC、ならびに他社製品のGCとLCの一部)を操作することを可能とした「OpenLab CDS2 ネットワークシステム」、そしてさまざまなネットワークを接続し、そのネットワークに接続できる分析装置の制限をなくした「OpenLabECM XT ネットワークシステム」の3種類に分けられる。
2017年版の改訂により、最近は世界的なトレンドとして、CD2のスタンドアローン版よりも、CD2ネットワーク版が採用されるケースが増えつつあるという。「例えばすでに敷設されているネットワークをベースに、増設を行なう場合、ネットワークの拡張を行なうだけなので、コストを抑えられる。サポートコストはデータサーバの台数によるので、サーバが増えなければ、余分なコストが発生せず、その浮いた分の費用を別の投資機会に振り分けることも可能になる」と、同氏はその背景を分析してみせる。
2017年版の発行により、試験や校正を実施する組織や機関などはデジタル化が必須となったと言える。アジレントでは、「組織の規模に合わせたシステムを導入することが重要」とコメントしており、データインテグリティの要件を完全に満たした各種サービスを提供する同社のような企業の活用をうながしていきたいとしている。