クラウド推進がベンダー側の働き方も改革

そして、2人の口から日本オラクルにおいて在宅勤務制度が活用しやすくなった背景として挙がったのが、クラウドサービスの導入だ。一般的に「クラウドで働き方改革」というと、クラウドサービスを導入する側の企業の目線で語られることが多い。しかし、両氏の話は、クラウドサービスを提供する日本オラクル自身がクラウドを活用している立場になったことを示唆している。

「コンサルタントはお客さまに合わせた働き方をするため、以前は客先にいる時間が長く、中には年に1度程度しかオフィスで会うことはないという人もいました。そのため、在宅制度があっても使いづらい状況にありました」と村井氏。

それが、同社が提供する商品がオンプレミスからクラウドサービスに変化してきたことで、働き方も大きく変わったという。すなわち、客先に常駐するのではなく、自社からリモートで対応するような働き方が多くなったのだ。リモートで対応できるのなら、必ずしもオフィスに残っている必要はない。自身の都合に合わせて、帰宅してから対応という働き方が可能になったという。

さらに、商品のクラウド化から社内で働く人が増えたことで、管理職としての部下との関わり方も変わった。「求められるマネージャー像が変わりました。今は、社内に多くの人がいるので、メンバーとのコミュニケーションが大事です。最初は会議や1対1でのコミュニケーションを重視していたのですが、外部の研修で日常的な声かけも重要だと知りました。今は従来のやり方に日常的な声かけも加え、話しやすい雰囲気を作っています」と村井氏は語った。

「サービスを提供するベンダー側でもクラウド化の波が働き方改革に大きく関与した」と両氏は語る。しかし、日本オラクルを目指す人の中には、すでにその空気を感じている人も少なくないようだ。

「私は採用も担当しているのですが、最近は男性からも在宅勤務制度についてよく聞かれますし、中にはクラウドサービスによって社内がどう変わったのかと聞く人もいます」と、村井氏はクラウドによる変化が注目されている実感を語ってくれた。

アジアにはまだ少ない女性リーダー育成に注力中

オラクルでは「Oracle Women’s Leadership」という、女性リーダーを育てるコミュニティ活動を行っている。日本独自の活動も行っているが、両氏は2018年のAPACの会議に日本代表の一員として参加した。各国から10名程度が集まり、3日間さまざまなワークショップや交流を行ったというが、その内容自体は女性にフォーカスしたものではなく、オラクル全体を対象としたものだったという。

「この取り組みは、女性にはチャンスが少ないので、女性だけのチャンスを与えようという狙いによるものだと思います。アジアは欧米に比べて女性リーダーが少ないので。みんなフレンドリーで、にぎやかでしたね」と近藤氏は参加した感想を語る。

海外社員との交流はもちろん、日本から参加したメンバーの中でもエンジニアは少なく、日本オラクルの社員同士でありながら初めて会う人も多かったという。

「私たちは初参加でしたが若手も多かったですね。いろいろな国の人とコミュニケーションを図ることができるのはいいことだと思いました。国民性もありますし、日本人同士でも普段は関わらない職種の人も参加しており、新鮮でした」と村井氏。

ビジネスがクラウドへとシフトしたことにより、海外拠点と協力して行うプロジェクトが多くなり、グローバルの一員という感覚へと変化してきているそうだ。そんな変化の中、両氏は若手にこそ積極的にマネージャーとしてのキャリアを考えてみてほしいと語る。

「30代くらいの人にも積極的にマネージャーをやってほしいと思います」と村井氏が語れば、近藤氏も「年齢で見る会社ではないのでチャンスはあります。自分のスタイルが固まる前にマネージャーになってみるのもいいと思います」と同意した。

これまで、技術者のままスペシャリストを目指す先輩はいても、マネジメントへと進む先輩はいない状態だった中、両氏が活躍することにより技術分野で女性が管理職になり、活躍するというロールモデルができたといえるだろう。若手にとって目指す背中ができたということは、大きい。今後、2人に続く女性管理職の誕生が楽しみだ。