高度なスキルを持つベテラン人材に活躍し続けてもらうために

SCSKは2018年7月、シニア人材活用を促進することを目的とした新制度「シニア正社員制度」を導入した。これは60歳で1度、定年を迎えた社員に対し、65歳を第2の定年とする正社員としての雇用継続を保証する制度だ。

同社では元々、2013年から法改正や公的年金の受給年齢引き上げを受け、定年後の再雇用制度を設けていた。年次更新の必要な契約ではあるが、実質的には65歳までの継続雇用に等しい状態にあったという。これに対し、「シニア正社員制度」はより安定的な正社員の身分を保証した上で、評価・報酬についても大きな改革を行ったことが特徴となっている。

SCSK 人事グループ 人事企画部 人事課の高山久氏は、新制度導入の背景を次のように語る。

「最近、求人倍率の高騰や採用マーケットの競争激化が話題になっていますが、IT業界では特に人手不足が深刻です。中途採用については6~7倍の求人倍率になっています。また当社では、社内で定年を迎える社員が今後急増することもわかっていました。さらに、ビジネスにおいても高度な専門性を持つ人材への需要が高まり、ベテラン社員に60歳以降も働いてもらわねばならない状況でした」

  • SCSK 人事グループ 人事企画部 人事課 高山久氏

SCSKにおいて、今後10年間で60歳を迎える人は約1800人。これは、在席する社員の25%に相当する。しかもそのうち、社内の専門性認定で高度レベルに位置付けられる社員が約500名含まれており、同クラス認定者の半数に及ぶ。高度な専門性を持つシニア社員のパフォーマンスに報いる報酬制度の策定が喫緊の課題となっていた状態だ。

50代から始まる「実年キャリアプラン」

「シニア正社員制度」は、単純に60歳以降の再雇用を保証するものではない。そこに向けた準備として、50代から始まる「実年キャリアプラン」に含まれる制度だ。

SCSKでは50代の早い段階で60歳以降のキャリアに関する研修を受講し、その後、54歳までにキャリアプラン(継続雇用希望有無)を決定し、継続雇用を希望する場合には選択したコースに沿った人事制度が適用される。60歳以降はシニア正社員となり、評価軸や報酬についても従来の社員とは別枠となる。

「シニア正社員には、従来の報酬に加え、新たにグレード別加算給が支給されます。報酬が2階建てになっている点が大きな特徴です。このほかに、全社的な取り組である専門性認定制度において上位レベル認定者へ支給している専門性認定手当を、シニア正社員になった後も継続して支給することにしました」と高山氏は語る。

グレード別加算給というのは「期待貢献度」に基づく給与だ。専門性やパフォーマンスの高さに応じて4段階で評価され、評価によっては、大きな追加報酬が得られる。グレードは、実際に担当する業務と直近3年間の貢献に対する評価で決まるため、定年前の57歳からは通常の社員としての評価とは別に、シニア正社員としての評価基準で評価を始めることになる。

「専門性認定手当」は、ITSS(IPAが定めるスキル標準)などを参考に作られた同社独自の認定制度で、保有スキルと経験によってレベルを認定するものだ。認定には有効期限があり、高度なレベルには各専門分野のプロフェッショナルによる面接もある。7段階の認定レベルのうち、上位4段階について年1回の手当または認定時の一時金が支給される。

「以前の再雇用制度ではボーナス代わりとして少額の一時金が給付されましたが、シニア正社員制度では定期的な貢献が認められれば、大幅なボーナスが支給され、しかも安定的に報酬水準がアップするイメージになります」と高山氏。

新制度によって雇用形態が安定的になるとともに、スキルのある人はこれまでよりも多くの報酬が得られるようになったわけだ。