近年、男性向けコスメティック分野の市場規模が拡大しているという。化粧品会社は相次いで男性向け商品を展開してプロモーションを拡大しているが、業界大手の資生堂がとったマーケティング手法は、意外なものだった。愛知県名古屋市で開催された、その現場を取材した。
“個人”ではなく“企業”にアプローチした資生堂のマーケティング
化粧品といえば“女性が使うもの”というイメージを持っている男性は多いのではないだろうか。しかし、富士経済がまとめた「国内化粧品市場調査」によると、10年前の2008年には1000億円に届かなかったメンズコスメティックス市場規模は右肩上がりで成長し、約10年で1175億円(2018年見込)になっている。洗顔料や整肌料(化粧水など)といったメンズフェイスケア分野に絞ると、洗顔やスキンケアの認知が拡大したことで需要が増加したことにより2018年は231億円を見込んでおり、今後も成長が期待されるのだという。
とはいえ、男性にとって馴染みの薄いスキンケア商品を店頭で手に取る機会を創出するのは、従来のプロモーションだけでは難しい。そこで、資生堂は企業向けに“肌マネジメント研修”という形でセミナーを開催。同社によると、これまでサイバーエージェント、東京海上日動火災保険、プルデンシャル生命保険などで営業担当者などを対象に研修会を行い、毎回50名以上が参加しているのだという。個人消費者にアプローチするのではなく、企業にアプローチすることでビジネスパーソンへの啓発機会を設けるという戦略だ。
取材日に行われた研修会は、トヨタ自動車をはじめ、地元にオフィスを構える大手企業の男性ビジネスパーソンが参加。資生堂ジャパン パーソナルケアマーケティング部 スキンケア・メンズ室の堀一臣氏が、セミナー形式で“なぜ男性ビジネスパーソンもスキンケアを意識しなければならないのか”を解説した。
堀氏によると、男性ビジネスパーソンにとってスキンケアの重要度が高まっている背景には、女性の社会進出やビジネスのグローバル化といったビジネスを取り巻く環境の変化が挙げられるのだという。同社が調べたところによると、海外では「ビジネスにおいて肌に気を使うのは当然」「肌のマネジメントができる人は仕事のマネジメントもできる」「きれいな肌は出世の武器になる」という意識が強く、一方で日本の男性ビジネスパーソンのスキンケア実施率は非常に低いとのこと。グローバルにビジネスを展開していく上で、スキンケアをはじめ自分自身の見た目の印象をマネジメントすることが重要な要素になっているのだそうだ。
その後、参加者たちは具体的なスキンケアの方法についてレクチャーを受け、実際に製品を使いながら自分の肌のスキンケアを体験した。自分の肌年齢を測定してみたり、洗顔料の泡立てを実践してみたりしながら、参加者同士でのコミュニケーションを楽しんでいる様子だった。