2007年には4,696万部あった新聞の発行部数が10年で3,876万部へと減少し(日本新聞協会調べ)、世帯あたりの発行部数も減少を続けるなか、新聞とともに各家庭に配布されていたスーパーなどの「折込みチラシ」はデジタル化を遂げ、スマートフォンで簡単にチェックできるようになり、主婦の日常生活にとって欠かせない存在となっている。
その代表格とも言える電子チラシサービス「Shufoo!(シュフー)」は、月間UU約1,100万人、月間PV約3.8億、出稿企業約3,800社、掲載店舗数約11万店と巨大なプラットフォームへと成長。メーカー企業・小売企業と消費者をつなぐタッチポイントとしてさまざまな価値を提供している。Shufoo!では、ユーザーから生み出されるデータをどのように活用し、新しい顧客体験やビジネスモデルを生み出そうとしているのだろうか。運営する凸版印刷 メディア事業推進本部の主任である森谷尚平氏に話を伺った。
既存ユーザーから得た“教訓”が変えた、Shufoo!のデータ活用
Shufoo!は、2001年にサービスを開始。スマートフォンの普及とともに着実にユーザー数を増やし、国内最大級の電子チラシサービスへと成長した。森谷氏によると、全ユーザーに対する女性の割合は76%で、そのうち30代、40代が62.8%、子育てをしている人が60.5%を占めているという。また、新聞を購読していない人は約75%にのぼり、新聞の折込みチラシに替わる存在として高い支持を受けていることも伺える。地域に密着したサービスという特徴により、ユーザーの居住地域も東京や関西の都市圏を中心に全国に広がっているのだそうだ。
Shufoo!にとってマーケティングの目的は、月間約1,100万人いるユニークユーザーの活性化と満足度の向上、そして増加を続ける新規ユーザーをサービスに定着させロイヤルカスタマー化していくことだ。同社では当初からこうしたマーケティング目的に対してデータを活用しようとさまざまなマーケティングツールを活用していたが、十分なデータ活用には至っていなかったのだという。
「既存のアナリティクスツールでは決められた分析しかできず、ユーザー分析を深くしていきたい、分析したデータを有効活用したいと考えると十分ではなく、サービスが生み出すさまざまなデータを活用するための基盤づくりが必要だった」と森谷氏は振り返る。
Shufoo!というサービスの中で、ユーザーは何をしているのか。サービス内では行動ログデータが今も生み出され続けている。そのリアルなデータを投入して多角的にユーザーを分析できる基盤として、同社では2014年にトレジャーデータのArm Treasure Data eCDPを導入するに至ったのだという。
「(広告などの)ターゲティングのためではなく、まずはユーザーの動向の分析から気づきを得て、ユーザーニーズに応える施策を展開していきたいと考えて導入した。どういう人がどの機能を使っているのか、どのような人がロイヤリティが高いのかを知ることで、サービス向上のためにデータを活用しようと考えた」(森谷氏)
森谷氏のこうした言葉の裏には、実はShufoo!がサービスを拡充するなかで生まれた“教訓”があるのだという。かつて、サービスのUIを大規模にリニューアルした際に、それまで頻繁に利用していたユーザーから「いつも使っている機能が使いづらくなった」と批判の声が寄せられたのだ。
「既存ユーザーに喜んでもらえるサービスの拡充をどのように進めていくのかは大きなテーマだった」(森谷氏)
データ基盤の導入によって、同社はサービス内部の施策を効果的に展開するためのユーザー分析を進めていく。例えば、ユーザーが利用開始した経緯を理解できるようにして、「ポイントなどのメリットに魅力を感じたのか」「特定の店舗のチラシに興味があるのか」といったユーザーの動機に応じてコンテンツのパーソナライズができるようにしたのだという。「データ基盤を導入したことで、それまでできなかったことを可能にした。“データを見る”という先にあるアクションにまで施策の幅が大きく広がった」と森谷氏は手応えを語っている。
なお、同社ではユーザーの個人情報を一切DMPに保管せず行動履歴をもとにしているのも大きな特徴だ。DMPで取り扱うのは、ユーザーがどの店舗のチラシやコンテンツを閲覧したかという行動履歴で、その履歴から興味のあるカテゴリーを分析したり、店舗の住所からユーザーの“買い物行動圏”を推測したりする。この“買い物行動圏”はユーザーによっては自宅周辺と会社周辺といった具合で複数ある場合もあるのだという。性別、年代や子どもの有無、携帯電話キャリアといったユーザーの属性データは、Arm Treasure Data eCDPに組み込んだ3rdパーティーのオーディエンスデータを活用しているという。