今年5月に、JR目黒駅前の目黒セントラルスクエアに新オフィスを開設すると発表したAmazon.co.jp。今回、新オフィスのオープニングイベントが開催され、オフィスを見学することができた。同社は、社員の柔軟な働き方を実現するため、どのような設備を導入したのだろうか。

さまざまな社員が快適に働ける環境を実現

アマゾンジャパン 社長 ジャスパー・チャン氏

アマゾンジャパン 社長のジャスパー・チャン氏は、「われわれのビジネスの起点はお客さまにあり、ビジネスを進めるにあたって他社との比較は行わない。お客さまのニーズに合った商品の品ぞろえ、利便性を追求する。これまで革新的なサービスを提供するため、テクノロジーに投資するとともに、パートナーシップを醸成してきた。創業当初は100人だった日本の社員も今は6000人を超えている。さらに1000人増やす計画だ。すべての社員が、お客さまのニーズに対応していくことを可能にするため、新オフィスではフリーアドレスを採用しているほか、社員の体と心の双方をケアすることを考えている」と語った。

アマゾン ウェブ サービス ジャパン 代表取締役社長 長崎忠雄氏

目黒セントラルスクエアには、アマゾン ウェブ サービス(AWS) ジャパンのスタートアップ企業を支援する施設「AWS Loft Tokyo」も開設される。同社の代表取締役社長を務める長崎忠雄氏は次のように述べた。

「われわれは現在、目黒に2つの拠点を持っているが、目黒セントラルスクエアと合わせて『キャンパス』として、新たな顧客価値を創造していきたい。今回、イノベーションを起こすために最適化されたスペースとして、フリーアドレスを実現した。われわれは画一的な働き方改革ではなく、揺らぎを持たせた改革を進めていく。社員が自宅やカフェで働いているような環境を用意した。そうした環境によって、部署や役職を越えた会話やコラボレーションが生まれ、顧客に価値を与えることを期待したい。新オフィスでは、社員の多様性を尊重するため、礼拝堂、搾乳室、ジェンダーフリーのトイレなどを設けている。さまざまな社員が心地よく働ける環境を実現した」

衆議院議員 自民党 広報本部長 IT戦略特命委員長 平井卓也氏

説明会には、来賓として衆議院議員 自民党 広報本部長 IT戦略特命委員長の平井卓也氏が出席した。同氏は、日本におけるデジタル化とITが抱える課題と展望について語った。

「日本には『高齢化』と『システムがレガシー』という2つの課題がある。高齢化については、将来、2人に1人が50歳以上になると言われているが、デジタルにアクセスできる人とできない人では差がついてしまう。国としては、高齢者のデジタルデバイドの解消に取り組んでいく。また、日本企業の古くから使われているシステムは、メインフレーム、オンプレミス、ウォーターホールがベースとなっており、これまでの投資があるため、変えられない状況にある。こうしたシステムに対し、クラウド、マイクロサービス、アジャイル開発が用いられたシステムはかかるコストや時間が圧倒的に少ない。2025年にはレガシーなシステムがわかる人が底をつくと言われている」

平井氏は、こうした日本の課題を解決するため、早ければ次の国会で「デジタル・ファースト法案」を提出すると述べた。この法案は、デジタル技術を活用して社会をよくすることを目的としており、クラウド・バイ・デフォルトを明確にするとともに、システム調達の方法も根本的に変えるという。

一般的に、新オフィスのお披露目などでは、テープカットが行われることが多いが、今回はジャスパー氏がスマートスピーカー「Amazon Echo」に、「今日は何の日?」などと話しかけることで、オープニングの儀式とした。

  • 「Amazon Echo」と新オフィスについて会話するジャスパー社長

ヨガを習い、マッサージを受けることも可能

ここからは、新オフィスの様子を写真メインで紹介していこう。新オフィスのデザインは、「自然と人間と空間がイーブン」をコンセプトとしている。オフィスには植物がふんだんに置かれており、その種類は600に上る。「光が通っているけれど、プライバシーが保たれた空間」を実現しているという。

今回、執務を行うスペースとして、18階を見学した。1人で集中するためのスペース、少人数でミーティングを行うためのスペースに、さまざまな種類の椅子や机が置かれていた。

  • 執務エリア。曲線を生かしたデザインになっている

  • 執務エリア。エクササイズができるツールも置かれている

27階にはカフェテリアがある。目を引いたのが、カフェテリアに置かれているテーブルが、オセロ・将棋・囲碁の盤、チェスボードなどになっていたことだ。支払いはキャッシュレスとなっており、混雑を避けるため食後に仕組みになっている。

  • カフェテリアのテーブルの上はオセロ、将棋、囲碁、チェスができるデザインになっている

  • 通称「ペイ(支払い)ポイ(捨てる)エリア。支払いは食後に行う

また、カフェテリアに隣接しているスペースでは週に2回ヨガ教室が開催されており、ヨガが終わったらシャワーを浴びることもできる。さらに、楽器を演奏できる防音室もある。

  • 靴を脱いでソファでくつろげるエリアもある。週に2回ヨガ教室が開かれている

17階には、ITコンシェルジュやセキュリティ・コンシェルジュが常駐しているほか、マッサージルーム、礼拝堂、搾乳室、休憩室などのさまざまなファシリティが設けられている。

  • 左から、マッサージルーム、礼拝堂

  • 左から、具合が悪い人が使える休憩室、冷蔵庫も備えている搾乳室

長崎社長が「自宅やカフェで働いているような環境を実現した」と述べていたが、これらの施設を見ると過言ではないことがわかる。今後、さまざまな工夫が凝らされた新オフィスがAmazon.co.jpの社員にどのような影響をもたらすのか興味深い。