副賞はシリコンバレー旅行、RPA推進でロボットコンテストを開催

メタルワン 経営企画部 デジタル・イノベーション室 室長 齊藤桂司氏

鉄鋼総合商社のメタルワンが、RPAを活用した業務効率の向上で成果を上げている。2017年から導入を開始し、初年度に79台のロボットを作成、それらを使って年間6000時間の削減効果を確認した。2年目となる2018年はロボット数がすでに100台を超え、ロボット作成の申請、承認、ガバナンスといった管理体制の構築に取り組み始めたところだ。

メタルワンでは、ロボットによる効率化でもたらされた時間を、業務改革やイノベーションの取り組みに振り向けている。例えば、働き方改革の取り組みを推進したり、取り組みのなかで知り合った社員同士で情報共有し、社外との交流から新しいアイデアを得たりする。RPAが単なる効率化のツールを越えて、全社的なデジタル・イノベーションを支えるための重要な取り組みの1つとなっているのだ。

そんなメタルワンのRPA活用の目玉ともいえる取り組みが「ロボコン」の実施だ。作成したロボットの出来をコンテスト形式で競い、社内から選ばれた審査員と社長ら経営陣の特別審査員を加えて最終ジャッジを下す。エントリーは7月で、ロボット制作期間は1ヵ月間の研修を含めて約4ヵ月。上位トップ3には、副賞としてシリコンバレー旅行が贈られる。

ロボコンのスタート時、多くの社員がわからないことばかりであったが、1つのロボットを完成させるとコツを得て、中には10個近く完成させた社員もいた。さらにコンテストの副次的な効果として、参加者同士の部を超えた情報交換や助け合いの関係が生まれている。

また、コンテストはアイデア創出の場にもなっており、汎用性の高い業務を対象としたロボットは今後全社標準型として多くの現場で利用される予定。

こうしたユニークな取り組みを推進しているのが経営企画部 デジタル・イノベーション室だ。室長の齊藤桂司氏は、メタルワンにおけるRPA活用の狙いについて次のように話す。

「イノベーションには3つの要素が必要だと思っています。時間、意欲、方法です。どう時間を創出するか、創出した時間の中でどう意欲を持って取り組むか、意欲を具体的にどんな方法で実現するかです。RPAは、最初の時間を作り出すという意味で重要なステップでした」

現場主導のRPAでイノベーションの時間を作り出す

時間を作り出す上では、最新のデジタル技術の活用がカギとなる。IoT、AI、ビッグデータといった技術の中からRPAが選択されたのは、メタルワンのビジネスや現場の風土にマッチしていると思われたからだ。

メタルワンのビジネスの特徴の1つは、鉄鋼総合商社として非常に多岐にわたる鉄鋼製品を取り扱い、鉄鋼メーカーや流通といった取引先のニーズに合わせてさまざまなカスタマイズを施すことにある。

メタルワン ITソリューション部システムユニット 兼 デジタル・イノベーション室 小林玲子氏

ITソリューション部システムユニットでIT施策を実施してきた経験を持ち、デジタル・イノベーション室も兼務する小林玲子氏は、メタルワンのビジネスとITの特徴をこう話す。

「取引先に対してきめ細かな対応を行うことは当社の文化と言えます。現場が独自にさまざま工夫を行っていて、ITに関しても部門部署ごとに異なる仕様やアプローチが存在しています。例えば、Excelのマクロなどを使って取引先のニーズに合わせて集計方法を変えたり、取引先に合ったレポートを作ったりといった工夫を各部署で行っています。こうした部門部署間の違いを標準化して1つのERPシステムなどに集約していくことは簡単ではありません。そうした中、RPAのような現場主導のアプローチは当社の現場の風土に合っていました」

デジタル・イノベーション室は、システムの標準化や見える化、連結経営のためのグループ基幹システムの刷新なども担当領域だ。RPA導入はこれらプロジェクトと並行して実施され、イノベーションを実現する最初の一歩に位置づけられていった。ただ、実際にどう導入するかは大きな課題になったという。

「RPAを導入する際に、さまざまな人から紹介を受けて他社の事例をリサーチしました。自社で専門部隊を作って開発しているケース、開発をベンダーに依頼して社内に管理部隊を置くケースなどがありました。しかし、当社のビジネス状況に照らすと、いずれのケースでも実施が難しいと感じました」(齊藤氏)

開発をベンダーに依頼しても、業務知識が多種多様であるため個別に伝達することが難しい。また、開発部隊を内製化する場合でもすべての業務をカバーする人材やスキルを集約することは現実的ではない。そうしたなかで出てきた案が「RPAのロボットコンテスト」だった。