日本マイクロソフトは9月4日、同社のヘルスケア事業に関する取り組み内容や方針を説明する記者説明会を開催した。

同社の平野社長は、先月行われた経営方針説明会の中で、ヘルスケアを注力する8つの業種の1つに挙げており、業種別組織の増員を行うと発表している。

  • ヘルスケアはマイクロソフトが注力する8業種の中の1つ

同社は、ヘルスケアビジネスに2005年からアプローチしており、国内の中規模病院の99%でWindows Server/SQL Serverが利用されており、国内の製薬企業の上位10社すべてがAzureを利用しているという。

日本マイクロソフト 執行役員 常務 パブリックセクター事業本部長 佐藤知成氏は説明会の冒頭で、「高齢化社会に向かっていくにあたり、ヘルスケアにおいては、院内の働き方改革、AI、IoTといった最新のテクノロジーが、社会の変革にどう寄与できるのかについて取り組んでいきたい」と語った。

  • 日本マイクロソフト 執行役員 常務 パブリックセクター事業本部長 佐藤知成氏

また、日本マイクロソフト 業務執行役員 医療・製薬営業統括本部長 大山訓弘氏はヘルスケアビジネスについて、「マーケットが拡大し、扱うデータも大きくなっており、医療ITの果たす役割も大きくなっている。個人データを扱うため、データに対するセキュリティ、テクノロジーに対する期待も大きく、患者が自分のデータを見たいというのニーズも高い。将来的にもっと大きくなっていく事業だ」と、市場の拡大に期待を寄せる。

大山氏は、ヘルスケア分野のデジタルトランスフォーメーションのテーマとして、リモート診断などの「患者との関わり」、働き方改革や地域の医療間連携などの「チーム対応力」、ゲノム解析、AIによる画像解析などの「臨床および運用の有効性最適化」、これらを含め、END to ENDで改革を行う「ケア全体の変革」の4つを挙げた。

  • HoloLendsを手に説明する日本マイクロソフト 業務執行役員 医療・製薬営業統括本部長 大山訓弘氏

  • ヘルスケア分野のデジタルトランスフォーメーションのシナリオ

同社がこれらの解決策として挙げるのが「ヘルスケアクラウド(Azure)」の活用だ。

大山氏は「ヘルスケアクラウド」は、セキュア、アドバンストテクノロジ、ワークスタイルイノベーションの3つの点で貢献できるとする。

  • 「ヘルスケアクラウド」が提供する3つの価値

セキュアの面では、各国のガイドラインに対応している点や、不正トラフィックの検知の実装、暗号化機能が備わっていること、ワークスタイルイノベーションでは、働き方改革のためのMicrosoft 365やMicrosoft Teamsなどのツールが備わっていること、アドバンストテクノロジでは、AI、MR(複合現実)などの最新技術が提供できる点を「ヘルスケアクラウド」を利用するメリットとして挙げた。

  • 「ヘルスケアクラウド」が対応するコンプライアンス認定。大山氏は、これがAzureの強みの1つだと語った

「セキュア、アドバンストテクノロジ、ワークスタイルイノベーションを一体で提供できるのはAzureだけだ」(大山氏)

アドバンストテクノロジは、医療関係者がもっとも期待している部分だといい、大山氏は、事例として、2D画像をを3D化(CG化)する「InnerEye」、HoloLendsを教育における標本標本の代わりに活用する事例や手術シミュレーションで利用する方法を紹介した。

  • 「InnerEye」

  • HoloLendsの活用

そして、10月1日にデジタルヘルス推進室を新たに設置し、医療機関、製薬企業、医療機器企業、パートナーとの連携および横断的な訴求活動のほか、テクノロジー、知見、事例などを集約し、一歩進んだクラウド技術活用を推進していくことを明らかにした。

  • デジタルヘルス推進室を新設

同社では、これらの施策によって、日本医療・製薬業界のクラウド化を推進し、クラウドの利用率を今後3年間で現在の4割から7割に引き続き上げ、売上を1.5倍にする目標を掲げている。