産業技術総合研究所(産総研)は8月31日、人工知能(AI)を用いてタンパク質の機能改変を効率よく行なう手法を開発したと発表した。
同成果は、産総研 人工知能研究センターの齋藤裕 研究員、東北大学 大学院工学研究科の梅津光央 教授、理化学研究所 革新知能統合研究センターの津田宏治チームリーダーらの研究グループによるもの。詳細は、米国化学会の科学雑誌「ACS Synthetic Biology」に掲載された。
機能性タンパク質を改変し、その機能を向上させたいというニーズに対して、これまでは、対象のタンパク質のランダムな変異を導入して多数の変異体タンパク質(ライブラリー)を調製し、その中から目的の機能を有するものを探し出すという手法がとられてきた。しかしこの手法には、費用と効率の面において課題があった。
そうした課題に対し研究グループは今回、最初に従来手法による小数の変異体を調製して実験を行い、人工知能のための学習データを取得。その後、人工知能技術の1つであるベイズ最適化を用い、どのような変異を導入すれば目的の機能を満たすタンパク質を得られるかの予測を行なうことで、目的の機能を有するタンパク質を豊富に含み、かつ安価に実験ができる小規模な変異体群(スマートホットライブラリー)の提案が可能であることを確認した。
実際に、緑色蛍光タンパク質(GFP)を黄色蛍光タンパク質(YFP)へ改変する問題に対し適用したところ、既知YFPより長波長で蛍光強度も高い新たなYFPを多数発見することに成功したという。従来手法で調整したライブラリのうちYFPは約3%程度であったが、新規開発の手法で得たライブラリでは、約70%という高い割合でYFPが含まれていることが示されたとする。
今回の成果について研究グループは、人工知能がタンパク質の機能改変に有効であることを示すものと説明しており、今後は、抗体や酵素など、医療・食品・環境といった、あらゆる場面で活躍できるさまざまな機能性タンパク質の開発に対して応用が期待できるとコメントしている。