マイクロソフトは6月29日、アジア地域でAIが既に大きな成果を挙げている分野として、「アクセシビリティ」「農業」「気候変動」「教育」「ヘルスケア」の5つを挙げた。

「アクセシビリティ」分野では、AIは視覚、聴覚、認知、運動の障碍を持つ人々を支援し、日々の作業を独立して行い、より生産的で充実した生活を送り、社会により深く参画できるようにしてくれるという。

同社は、AIを活用して顔、感情、手書き文字など、多様な視覚情報を識別してくれるiOSアプリ「Seeing AI」を開発し、無償で提供している。これらの情報は、視覚障碍を持つ人々のために音声情報に変換される。これにより、ロービジョン者の日々の生活を容易にし、視覚的世界へのアクセシビリティを高めるとしている。

  • 「Seeing AI」の利用イメージ

「農業」分野においては、インドで非営利団体「International Crop Research Institute for the Semi-Arid Tropics (ICRISAT)」と協業し、天候や土壌などの指標に基づいて作物の植え付けに最適な日を農家に助言する「AI Sowing App」を開発した。

このソリューションは、AIを活用して過去30年間の気象データを分析し、リアルタイムのデータと天候予測モデルを使用して雨量と土壌水分を計算することで、最適な播種期を予測する。このプログラムは、農地にセンサーを設置するなどの農家による投資を必要としないため、新興国での利用に特に適している。

「気候変動」分野において、マイクロソフトはAIの支援によりデータセンターの運用とインフラの管理を行っており、その結果として、データセンターの計算と冷却に必要とされる電力が減少しているという。

従来型のデータセンターと比較して、マイクロソフトのクラウドサービスはエネルギー効率が93パーセント高く、炭素効率性が最大98パーセント優れているという結果が紹介されている。

また、AIテクノロジの活用により、データセンターだけではなく建物全体におけるエネルギーの効率性の向上が可能で、シンガポールでは、国家の電力のおよそ3分の1が建物で使用されている。

また、国家の産業基盤開発を担う政府機関JTCは、建物の監視、分析、最適化の運用をMicrosoft Cloudに集約することで、この膨大な電力消費に積極的に対応しており、センサーデータとAIによる分析を活用し、JTCは、故障が起こる前に予測モデルによって問題を識別し、修正できるようになり、これにより、エネルギーコストが15パーセント削減された。

「教育」分野においては、南インドのアーンドラ・プラデーシュ州において、マイクロソフトは政府と協力し、学校からドロップアウトする可能性が高い学生を予測する新しいアプリを開発した。

このアプリは機械学習、AI 機能、クラウドを活用し、入学時の情報、成績、性別、社会経済的特性、学校のインフラ、教師のスキルなどの複雑なデータを分析してパターンを探し出すことができる。

これにより、行政と学校の担当者はリスクが高い学生を早期に特定し、ドロップアウトを防ぐためのプログラムやカウンセリングを提供する。このアプリはアーンドラ・プラデーシュ州の1万校以上の学校で使用されており、2017年時点で500万人以上の学生が対象になっているという。

「ヘルスケア」分野においては、インドにおいて、医療組織「Apollo Hospitals」と協力し、世界の人々の死因のおよそ3分の1を占める心臓病の克服を目指してAIにフォーカスしたネットワーク を開発した。

インドに絞っても年間およそ300万件の心臓発作が発生しており、3000 万人のインド人が心臓病を患っていると推定されている。このパートナーシップは、マイクロソフトのAI 専門知識とApollo Hospitalsの心臓病における経験と知識を組み合わせることで、新たな機械学習モデルを開発し、患者の心臓病リスクを予測し、医師の治療計画を支援することを目標にしている。