東京工業大学(東工大)は、同大の研究グループが、ふたつの脱ユビキチン化酵素がストレス顆粒の消失を促すことを発見したことを発表した。

この成果は、東工大科学技術創成研究院 細胞制御工学研究センターの駒田雅之教授、福嶋俊明助教、生命理工学研究科 生体システム専攻の解玄(Xie Xuan)大学院生らの研究グループによるもので、英国の細胞生物学専門誌「Journal of Cell Science」電子版に4月12日付けで掲載された。

  • USP5やUSP13はストレス顆粒内のユビキチン鎖を分解する(出所:東工大ニュースリリース※PDF)

    USP5やUSP13はストレス顆粒内のユビキチン鎖を分解する(出所:東工大ニュースリリース※PDF)

ストレス顆粒は、真核細胞の中に存在するRNA-タンパク質複合体に富む構造体で、細胞が熱などのストレスを受けると形成される。何らかの原因でストレス顆粒が消失せず過剰に蓄積すると、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経変性疾患発症の一因になる。ストレス顆粒の形成や消失を調節する分子機構は、未だに不明点が多いのが現状である。

研究グループは、細胞を44°Cの環境で培養することによって形成されるストレス顆粒を詳細に解析し、多くのユビキチン化タンパク質が含まれていることを見つけた。この熱誘導性のストレス顆粒には、脱ユビキチン化酵素であるUSP5とUSP13のふたつが引き寄せられており、これらはストレス顆粒内の様々な種類のタンパク質のユビキチン化修飾をはずす役割を担っていることがわかった。

USP5やUSP13の働きを人為的に抑えると、ストレス顆粒にユビキチン化タンパク質が過剰に蓄積され、ストレスの解消後もストレス顆粒が消失しにくくなった。これらのことから、ふたつの脱ユビキチン化酵素がストレス顆粒の消失を促す働きをもつことが明らかになった。

最近の研究で、ALSをはじめとするさまざまな神経変性疾患でストレス顆粒の構成タンパク質の遺伝子変異が見つかっている。これらによりストレス顆粒が過剰に蓄積し、神経変性疾患発症の原因になっていることが明らかにされつつある。今回、ふたつの脱ユビキチン化酵素がストレス顆粒の消失に重要な役割を果たしていることが明かとった。この発見をもとに、例えばストレス顆粒に局在するこれらの脱ユビキチン化酵素の活性を高めるなどして、過剰に形成されたストレス顆粒を効率的に消失させる手法を開発できれば、神経変性疾患の新しい治療法の開発につながる可能性があるということだ。