日立製作所は5月9日、都内で記者会見を開き、ミッドレンジフラッシュストレージ「Hitachi Virtual Storage Platform(VSP)ファミリー」を刷新し、オールフラッシュストレージ「VSP F900」など10機種を発表した。

今回、同社ではVSP F900に加え「VSP F700」「VSP F370」「VSP F350」、HDDの搭載が可能なハイブリッドフラッシュストレージ「VSP G900」「VSP G700」「VSP G370」「VSP G350」「VSP G150」「VSP G130」の計10機種(G130のみ6月29日に提供開始予定)の提供を開始した。

  • 「VSP F900」

    「VSP F900」

  • 「VSP G150」

    「VSP G150」

冒頭、日立製作所 システム&サービスビジネス サービス&プラットフォームビジネスユニット ITプロダクツ統括本部 プロダクツビジネス本部 本部長の後藤照雄氏は「あらゆるデータへの随時・高速アクセスを最適な投資で高効率に運用し、データセンター(DC)やITシステムの近代化(Data Center Modernization)を推進していくため、高信頼・高可用・高性能・高効率なストレージ基盤を提供する」と強調した。

  • 日立製作所 システム&サービスビジネス サービス&プラットフォームビジネスユニット ITプロダクツ統括本部 プロダクツビジネス本部 本部長の後藤照雄氏

    日立製作所 システム&サービスビジネス サービス&プラットフォームビジネスユニット ITプロダクツ統括本部 プロダクツビジネス本部 本部長の後藤照雄氏

  • ストレージ戦略の概要

    ストレージ戦略の概要

新製品群は、フラッシュ媒体のアクセス性能を最大限に引き出すため、データアクセス処理などの機能を刷新した新アーキテクチャを搭載し、ハイエンドクラスからローエンドクラスまでをカバー。最上位モデルのVSP F900は、従来のハイエンドモデルを上回る性能を備えていることから、従来のハイエンドストレージからの置き換えを可能としている。

同氏は、新アーキテクチャについて「データのアクセス処理を徹底的に見直した。従来はメモリの排他制御がボトルネックとなっていたが、新しいアーキテクチャはコマンド処理から論理変換、データ読出しまでを一括処理することを可能しており、F900と従来製品の『VSP G1000』と比較し、IOPSが14%向上した」と説明。

  • 新アーキテクチャの概要

    新アーキテクチャの概要

また、高性能と容量削減を両立する技術として「インライン/ポストプロセス重複排除選択技術」を採用。インライン方式は、データ格納用の一時領域が不要なため、即時データを削減し、移行先のストレージで消費するデータ量を抑止する。

一方、ポストプロセス方式はI/O性能への影響が小さいことから、業務処理を優先的に処理することを可能としている。通常の運用時はポストプロセス方式、データ移行時やバッチ処理時(大量なデータ更新)はインライン方式でそれぞれアクセスに応じて、自動で切り替えることにより、業務性能への影響極小化と容量削減を両立するという。

  • ポストプロセス方式とインライン方式の概要

    ポストプロセス方式とインライン方式の概要

さらに、データ信頼性・可用性を担保する機能も提供(G130以外の全製品が対象)。具体的には拠点間でのストレージクラスタで障害発生時でも継続的にデータアクセスを可能とする「Global-Active Device」や同期コピーで局地災害/障害対策を行う「Hitachi TrueCopy」、非同期コピーで広域災害対策を図る「Hitachi Universal Replicator」をサポート。そのほか、データ移行は10機種すべてに対して支援し、運用開始までの時間は最短10分台だという。

製品仕様はF900はインタフェースが16Gbps FC×8ポート~、キャッシュが1024GiB、システム物理容量が約2835GB~、価格は4132万6000円(税別)~。G900は、インタフェースが16Gbps FC×8ポート~、キャッシュが512GiB、システム物理容量が約864GB~、価格は3020万1000円(同)~。

コストパフォーマンスを向上するサービスと運用管理の自律化

加えて、これらの新製品群と併せて「データ容量最適化サービス」と「Automatic Storage Operation for JP1」(7月31日に提供開始予定)の機能を全モデルに搭載する。データ容量最適化サービスは「データの圧縮・重複排除の機能を顧客の環境を事前検証し、検証した結果の構成を提案し、提案を保証するというものだ。

同等価格における導入効果の比較では、最大10倍(性能向上効果と価格低減効果で算出。実際の容量削減率は顧客のデータにより異なる)のコストパフォーマンスを実現したほか、データベース(Oracle DB 12c)環境での効果検証では重複排除+圧縮機能をOFFにした場合は消費量が10.4TBだったが、ONにした際は2.8TBに削減することを確認したという。

  • 「データ容量最適化サービス」で得られる効果の概要

    「データ容量最適化サービス」で得られる効果の概要

Automatic Storage Operation for JP1は、ITインフラ運用の自動化を行う「Hitachi Automation Director」と、統合システム運用管理システム「JP1」と連携。

アプリケーションからストレージまでITシステム全体の運用・管理を自律化することで、迅速なリソース割り当て、運用コストの削減、操作ミスの低減を可能としている。導入効果の一例としてストレージの設定で90%の時間短縮、70%の手動操作を削減したという。

  • 「Automatic Storage Operation for JP1」の概要

    「Automatic Storage Operation for JP1」の概要

価格はデータ容量最適化サービスが個別見積もり、Automatic Storage Operation for JP1が34万円~。

最後に、同社の将来的なストレージ戦略について後藤氏は説明した。同社では、4月3日にUMCエレクトロニクスとモノづくりの強化を図るため協業に基本合意している。そのため、今後は競争力を有した新たな製造業のビジネスモデルを確立し、日立ブランドのストレージを需要が急拡大するDC市場向けをはじめ、国内外の顧客に提供していくという。

また、重点的な取り組みとして「サービス指向の事業強化」と「成長分野の開発強化・拡大」の2点を挙げていた。

この点について同氏は「サービスを下支えするプラットフォームが必要なことから製品開発、販売を強化し、モノづくり力の融合で事業強化を図る。また、顧客のニーズを踏まえた従量課金、コスト最適化を実現するサービスを強化する。さらに、NVMeやSCM(Storage Class Memory)など新技術を活用するほか、Software Defined製品の市場投入、予兆検知による障害解決、DCの運用管理の簡素化、コスト最適化に取り組む」と、意気込みを語っていた。

  • 「サービス指向の事業強化」と「成長分野の開発強化・拡大」に重点的に取り組む

    今後は「サービス指向の事業強化」と「成長分野の開発強化・拡大」に重点的に取り組む