情報通信研究機構(NICT)とアストラゼネカは、自動翻訳システムの共同研究に関する実施契約を締結したことを発表した。今後、両者で医薬業界に特化した自動翻訳システムの実用性を検証します。

近年、特許分野など一部の専門領域では、AIによる自動翻訳が実用化されている。一方で、製薬業界において同技術は開発途上だが、多くの企業において日本と外国とが同時に治験を実施する国際共同治験が主流となっていることから、迅速かつ適切な翻訳へのニーズが高まっている。

今回、情報通信研究機構(NICT)とアストラゼネカは、こうした背景を踏まえ、NICTの最先端のAI翻訳エンジン「TexTra」を用いて、医薬分野に特化した精度の高い自動翻訳システムを開発するという共同開発に合意した。

NICTは、総務省と共に「翻訳バンク」の運用を行っており、翻訳データを集積して日本の翻訳技術の多分野化・高精度化に取り組んでいる。NICTにとって今回の契約は、製薬企業との初めての取り組みとなる。

一方、アストラゼネカは同社の対訳データをNICTに提供し、医薬分野に特化した翻訳システムの実用に向けて共同で検証を行うとともに、カスタマイズされた翻訳システムの使用権利を得る。医薬分野に特化した精度の高い自動翻訳システムが開発されることで、翻訳作業が効率化し、新薬をはじめとする薬事申請をより迅速に行うことが可能となる。

アストラゼネカ研究開発本部長の谷口忠明氏は、次のように述べている。「最先端の素晴らしい技術を持つNICTとAI翻訳を共同開発できることを非常に嬉しく思います。医薬品開発に対応できるAI翻訳エンジンは、グローバル医薬品開発プロセスに革新的な変化とベネフィットをもたらすことでしょう。当社は、今後もこのような日本の素晴らしい技術やサイエンスとのコラボレーションを積極的に実施し革新的な医薬品開発へ生かしていく所存です」。