昨年8月に渋谷区にオープンした「楽天カフェ FCバルセロナフロア」。先月末まで同フロアにおいて、FCバルセロナのMR(Mixed Reality:複合現実)コンテンツのトライアルを実施していた。そこで今回、MRの活用を含め、楽天 執行役員 楽天技術研究所 代表の森正弥氏らに話を聞いた。
FCバルセロナフロアでは、先月末まで1980~2014年までの歴代48着のユニフォームを展示。「Microsoft HoloLens」を着装して展示されたユニフォームを見て指でジェスチャーすると、ユニフォームを着用したリオネル・メッシ選手やアンドレス・イニエスタ選手などの画像や、バーチャルのサッカーボールなどの動画コンテンツが流れ、現実と仮想が融合した世界が体験できるというもので、開発したのは楽天技術研究所だ。
デザイン思考的アプローチが求められるMR
現在、楽天技術研究所は東京、ニューヨーク、ボストン、パリ、シンガポールの世界5カ所に展開し、130人のメンバーが在籍。1人1人がそれぞれ独自の研究テーマに取り組んでいる。
同研究所では、研究者の問題意識に基づいて研究プランを構築し、楽天グループのフィールドを活用したり、グループの顧客と共同で取り組んだり、新しい技術や学術的な最先端の技術をビジネスに活用することを目標としている。
研究領域について森氏は「大きくパワー領域とインテリジェント領域、リアリティドメイン領域の3つに分かれている」と説明する。
パワー領域は、スーパーコンピューターの開発プロジェクトや分散・クラウドコンピューティングの技術開発、AIによるネットワークの最適化、ドローンの開発などを手がけている。
インテリジェント領域は、データから価値を生み出す高度なレコメンデーションやパーソナライゼーション、ディープラーニングを用いて潜在顧客を発見するマーケティング手法、隠れたニーズを抽出する技法、機会翻訳の開発などを担っている。
リアリティドメイン領域は、UX(ユーザーエクスペリエンス)が今後どのように変化していくのかなど、ディープラーニングを活用した画像認識技術をフリマアプリの「ラクマ」に組み込んでいる。また、MR/AR/VRの研究では、技術を外販するのではなく、多様なクライアントと共同で新しい未来像を追求することをテーマとしている。
地域別の研究領域としては、ボストンではEコマースにおいて重要であるプロダクトデータサイエンスに取り組んでおり、ディープラーニングやアンサンブルラーニングなどを活用し、楽天市場の商品データに活用している。
シンガポールは機械翻訳を中心に人間の言語学習など研究を行っており、パリはヨーロッパのビジネスにおけるデータサイエンス領域、VRアプリの研究。東京は全領域をカバーし、ドローンやネットワークの最適化、デジタルサイネージとスマートフォンのインタラクションなどは東京のみとなっている。
森氏は、これまでの楽天グループのMRに関する取り組みとして「ヤッホーブルーイングと『よなよなエール』のコラボレーション企画を実施したほか、今回の楽天カフェにおけるFCバルセロナフロアにおけるMRの活用などが挙げられる」と、説く。
基本的には店舗スタッフを巻き込み、デザイン思考的なアプローチで、新技術がどのように実際のフィジカルな店舗に取り込まれていくのか、店舗のスタッフなども新技術で企画を立案し取り組めるのかなど、店舗の未来像の体験や新企画を推進していくことを試みたという。